京都府舞鶴市は、「舞鶴引揚記念館」をリニューアルオープンした。
京都府北部の日本海に面し、昭和20(1945)年の終戦直後から13年間にわたり、約66万人の引揚者を受け入れてきた“引き揚げのまち”の舞鶴市(市長:多々見良三)は、このほど、市直営の舞鶴引揚記念館(館長:山下美晴)の2期リニューアル工事が完了し、開館30周年の記念日にあたる本年(2018年)4月24日(火)にグランドオープンしました。
当日(4月24日)は、来賓、シベリア抑留・引揚体験者、当市引揚記念館事業の支援者、市民代表、地元の小学生をはじめ、堤 茂副市長(舞鶴市長職務代理者)、山下美晴館長など関係者を含む約250名が参加し、記念撮影の後、午前10時から、開館30周年とグランドオープンを祝う「記念セレモニー」を執り行いました。また同日から、2期リニューアルで新設した企画絵画展示室で「平成30年度第1回企画展 グランドオープン&開館30周年特別企画展 MEMORY OF WORLD -たどる記憶 たずねる過去-」がはじまり、シベリア抑留や引き揚げの過酷さ、生きている実感、生き抜こうという強い意志、望郷の想いなど、作者が体験し忘れられない場面や想いを描いた回想画79点を展示しています。企画展は7月1日(日)まで開催、入館料だけで見学できます。
《2期リニューアルの主な内容》
舞鶴引揚記念館は、昭和63(1988)年4月23日、年々薄れてゆく戦争や引き揚げの史実を若い世代に伝承し、平和の尊さと祈りを発信していくことを目的に開館。平成27(2015)年10月、シベリア抑留と引き揚げの資料570点が「ユネスコ世界記憶遺産」に登録されたことを機に、展示室やエントランスを全面改修し、平和学習のためのセミナールームを新設するなど、全面リニューアル(1期)を行いました。
今回の2期リニューアルでは、世界が認めた「ユネスコ世界記憶遺産」にふさわしい登録資料の活用と適切な保存・管理の環境の整備を目的に、抑留体験者や引揚者などが当時の様子を描いた約1,300点の回想絵画を展示する「企画絵画展示室」を増築。
併せて、戦争を知らない若い世代に、シベリア抑留者が体験した厳しく過酷な収容所の生活環境を伝え、理解と共感を深めてもらうために、ラーゲリーの兵舎の内部とその周辺を再現した「抑留生活体験室」を新設しました。
特に「抑留生活体験室」では、ラーゲリーで実際に行われていた「生きるための工夫」として、収容人員数以上の抑留者が収容されたラーゲリーでは寝るスペースも極端に狭いため、木製の二段ベッドに頭と足を交互にして眠っていたこと。わずかに与えられる食事を仲間と公平に分けて食べるために、手作りの天秤で黒パンを量っていたことなど、抑留体験者の証言を基にした生活の一部を体験・体感できると共に、抑留者たちが最後まで「生きる希望を失わなかった」ことを伝えていきます。
【舞鶴引揚記念館 概要】
●2期リニューアル概要
整備目標
・平和学習に適した次世代体験型展示
・「ユネスコ世界記憶遺産」にふさわしい保存活用環境整備
・来館者の満足度の向上
工期
平成29(2017)年7月~平成30(2018)年3月
工事延床面積
増築部分:412.88㎡、改修部分:47.48㎡
竣工日
平成30(2018)年3月20日(火)
オープン日
平成30(2018)年4月24日(火)
※同日は、開館30周年記念日
整備概要
・企画絵画展示室の増築
開館から30年間に寄贈された約1,300点の絵画、漫画(イラスト)などの展示に利用。
・抑留生活体験室の新設
■木製の二段ベッドや薪ストーブが置かれていたラーゲリーの兵舎の内部、作業道具や薪などが置かれたラーゲリー敷地内を再現。
■頭と足を交互にしてベッドに寝る、手作り天秤を使って黒パン(模型)を量って分ける、抑留者の外套(当時のもの)にふれる、かばんの中の持ち物を取り出すなどが体験できる。
■音響で、窓が軋む、隙間風が漏れるなどの寒々とした吹雪の夜明けを演出
■窓の外に広がる極寒のシベリアを液晶モニターと音響で演出
・収蔵庫の増築
「ユネスコ世界記憶遺産」登録資料をはじめ、貴重な資料の適切な保存環境を保つため、温湿度管理のできる空調設備を導入。
●施設概要
施設名
舞鶴引揚記念館
開館日
昭和63(1988)年4月24日
※平成24(2012)年から市の直営施設
所在地
京都府舞鶴市字平1584番地
開館時間
9:00~17:00
休館日
毎月第3木曜日(8月と祝日を除く)、
年末年始(12月29日~1月1日)
入館料
<個人>
大人300円、学生(小学生~大学生)150円
<団体(20人以上)>
大人200円、学生(小学生~大学生)100円
※舞鶴市内在住・在学の学生は無料
公式WEBサイト
施設面積
引揚記念館(延床面積:1348㎡)
絵画美術品収蔵庫(延床面積:125.13㎡)
収蔵資料数
シベリア抑留や引き揚げに関する約16,000点
常設展示資料数
約1,500点
入館者数
414万9,553人(平成30年4月24日現在)
【グランドオープン&開館30周年特別企画展 概要】
催事名
「平成30年度第1回企画展
グランドオープン&開館30周年特別企画展
MEMORY OF THE WORLD -たどる記憶 たずねる過去-」
目的
このたびの「企画絵画展示室」のグランドオープンに伴い、舞鶴引揚記念館が収蔵するシベリア抑留と引き揚げの回想画約1,30点の中から79点を展示すると共に、すべての回想画を映像で紹介する。
※同館が収蔵する回想画は、過酷な場面だけでなく、抑留中に他国の兵士と交流があったこと、子供の目線からみた引揚の記憶など、さまざまな側面から描かれていることが大きな特徴。
期間
平成30(2018)年4月24日(火)~7月1日(日)
※期間中の休館日:5月17日(木)、6月21日(木)
場所
舞鶴引揚記念館 企画絵画展示室
料金
入館料だけで見学可能
展示絵画点数
79点(映像コーナーでは所蔵する1,300点すべてを紹介)
展示絵画の作者
全32名
■「ユネスコ世界記憶遺産」登録資料〔3名/順不同、敬称略〕
羽根田光雄、木内信夫、安田清一
■引き揚げ漫画挿絵(イラスト)〔12名/順不同、敬称略〕
赤塚不二夫、北見けんいち、ちばてつや、高井研一郎、
森田挙次、上田トシ子、古谷三敏、横山孝雄、山内ジョージ、
山口太一、林静一、バロン吉元
■油彩・水彩画〔17名/順不同、敬称略〕
佐藤清、斎藤邦雄、荒木忠三郎、小林英夫、吉田勇 ほか
※舞鶴観光の情報は「まいづる観光ネット」を参照してください。
※状況によって、イベントの内容を変更・中止する可能性があります。
予めご了承ください。
※参考1:「世界記憶遺産」の名称について
「世界記憶遺産」の名称は、平成28(2016)年6月、文部科学省と外務省が英語名の「Memory of the World」を直訳する『世界の記憶』に改称すると発表しました。舞鶴市では、「舞鶴への生還 1945-1956シベリア抑留等日本人の本国への引き揚げの記録」の登録申請時(平成26年3月)および決定時(平成27年10月)に「世界記憶遺産」を使用していた経緯があり、また市民などに浸透していることから、現在も「世界記憶遺産」の名称を使用しています。
※参考2:舞鶴市の紹介
舞鶴市は、縄文時代から交易の要所として繁栄し、明治34(1901)年の舞鶴鎮守府(旧海軍の統括機関、初代司令官庁は東郷平八郎)の開庁以来、日本海側で《唯一の軍港都市》として発展
してきました。市内は、戦国武将・細川幽斎が築いた田辺城の城下町として古い町並みが残る「西地区」。平成28年度の「日本遺産」に認定された旧海軍ゆかりの「赤れんが倉庫群」など、近代化遺産が数多く残る「東地区」を中心に形成されています。
現在、市内沿岸部には海上自衛隊舞鶴地方総監部、第八管区海上保安本部が設置され、「海上自衛隊」と「海上保安庁」の拠点が同一の市に設置されている《全国で唯一》の都市です。また、舞鶴市は戦後13年間にわたり、海外から約66万人の引揚者を迎え入れた「引き揚げのまち」でもあり、平成27(2015)年10月、舞鶴市が所蔵するシベリア抑留と引き揚げに関する資料570点がユネスコの「世界記憶遺産」に登録されました。
舞鶴市は、70年以上前、旧ソ連時代のウズベキスタン(平成3年独立、現在はウズベキスタン共和国)における日本人抑留者の実直で勤勉な仕事ぶりが「縁」となり、平成29(2017)年11月、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会における同国のホストタウンとして、レスリングと柔道の2競技の事前合宿が決定しました。
人口:80,903人(平成30年4月1日現在の推計人口)
面積:342.12k㎡(平成28年4月1日現在)
市長:多々見良三(たたみ・りょうぞう)