中国からの訪日観光は、個人旅行化が進み、リピーターを中心として体験型観光への関心が高まっている。日本政府観光局(JNTO)が2月21、22日に東京都内で開いたインバウンド旅行振興フォーラムの中で報告した。JNTOでは、個人旅行化、興味や関心の多様化に対応するため、SNSなどを活用したデジタルマーケティングを強化している。
観光庁の調査によると、個人旅行の割合は2010年には22・5%だったが、査証(ビザ)の要件緩和などで15年には43・8%に増加。16年に入ると50%を超え、16年10~12月期には61・8%に達した。JNTO北京事務所の服部真樹所長は「猛烈なスピードで個人旅行化が進んでいる」と報告した。
リピーター数も増加している。内陸部の都市など新たな市場の成長もあり、初訪日の割合は依然大きく、リピーターは全体の3割程度ではあるが、その実数は急増している。
リピーターの動向では、中国語で「体験型観光」を意味する「深度游」もキーワード。再訪日の際の興味、関心は、「四季の体感」「スキー・スノボ」「歴史・文化体験」「自然・農漁村体験」「日常生活体験」などが高まる傾向が見られることから、地方への誘客拡大の好機となっている。
JNTOは、個人旅行やリピーターの増加、体験型観光への関心に対応するため、デジタルマーケティングに注力している。地方への誘客を促進するビジット・ジャパン(VJ)事業のプロモーションなどに中国のデジタル環境に対応した宣伝手法を取り入れている。
その一つが、SNS「WeChat(微信)」の「モーメンツ」(朋友圏、登録した友人間での投稿共有機能)内に広告を掲載する手法。モーメンツ広告は、地域、性別、年齢、婚姻状況など、配信先のユーザーの属性が設定可能なことが特徴。静止画と動画で「効率的に情報を発信できる」(JNTO上海事務所の原口健司所長)。
ライブ配信機能を備えたサイト「直播」も活用している。視聴者とのリアルタイムのコミュニケーションが可能で、中国ではユーザー数が急増しているという。VJ事業では、熊本地震からの九州旅行の需要回復に向け、九州旅行の模様をライブ配信するプロモーションを実施した。