中国からの10月の訪日旅行者数は、前年同月比1.8%減の10万6千人となり、9カ月ぶりに減少に転じた。尖閣諸島沖の漁船衝突事件を受け、訪日旅行を控える動きが出たためだ。訪日旅行の申し込みは11月も低調に推移している模様。観光庁や日本政府観光局(JNTO)ではプロモーションを強化し、中国最大の旅行シーズンにあたる旧正月(春節)などに向け、需要を回復させたい考えだ。
JNTOが11月24日に発表した。中国からの訪日客数は1〜10月累計では前年同期比49.0%増の128万4千人と大幅に増加。今年2月から毎月、過去最高を記録し続けていたが、9月7日に発生した衝突事件の推移により10月は需要が落ち込んだ。
事件発生後も国慶節の休暇期間(10月1〜7日)までの観光旅行は、すでに旅行会社への申し込みが終わっていたことなどから、影響は限定的だったが、休暇明け以降、新規の申し込みが減少した。11月も需要は回復していないとみられる。
事件後の訪日旅行を巡っては、中国の一部の地方旅游局が9月下旬、現地旅行会社に訪日旅行の募集自粛を要請した。また、日本国内で中国人客の乗る観光バスの運行に妨害行為が起きたことで、中国国家旅游局から旅行者に注意喚起も出されていた。
中国市場の現状についてJNTOの平田真幸海外プロモーション部長は11月24日の記者発表会で、「現地旅行会社の募集広告は今では平常通りに出されているが、日本に旅行しづらい雰囲気があるのも事実だろう」と指摘した。
一方で、現地旅行会社などを対象とした観光庁のビジット・ジャパン事業などは着実に実施されている。「事件の影響は一過性の動きと捉え、特に旅行会社のツアー造成、販売の支援に力を入れている」(平田部長)。春節(2月3日)をはさんだ大型連休に向けて需要の回復を目指している。
10、11月には、中国の旅行会社を対象にした招請事業として、雪を観光資源とした商談会が日本国内で実施された。また、訪日旅行の不安払しょくに向けては、JNTOが9月29日と11月12日、理事長名の歓迎メッセージをウェブサイトやメールなどで一般、旅行会社、メディアなどに発信。中国最大の旅行博「CITM」(11月18〜21日、上海)では、日本ブースで官民を挙げて訪日旅行の魅力をPRした。
JNTOの間宮忠敏理事長は、記者発表会の中で「9カ月ぶりのマイナスは残念だが、長期的にみれば、中国が最も拡大が期待される市場であることにいささかの変わりはない」と述べ、年末や春節の訪日旅行促進に全力を上げる考えを示した。