観光庁の蒲生篤実長官は、世界レベルの宿泊施設の誘致・整備の促進について、10月23日の専門紙向け会見で狙いや取り組みの方向性を語った。
――「世界レベルの宿泊施設」の整備を促す狙い、施設のイメージは。誘致、整備などに向けた施策は。
2030年の訪日外国人旅行者数6千万人、訪日外国人旅行消費額15兆円という大きな目標を堅持するというのが前提だ。その中でわが国が誘致しきれていない富裕層など、上質な観光サービスを求め、これに相応の対価を支払う旅行者の訪日、滞在の促進を図るための環境整備がコロナ禍であっても急務だ。
このため「上質なインバウンド観光サービス創出に向けた観光戦略検討委員会」の初会合を開き、そのもとに「上質な観光地整備実行チーム」を置き、第1回は合同開催とした。この実行チームではテーマとして、地方部を中心に世界レベルの宿泊施設の誘致に向けて地域とともに取り組むというのが一つの大きな柱。この実行チームでの検討が一つの核となってくる。
世界レベルの宿泊施設とは、いわゆる「5つ星」ホテルだけではなく、和のおもてなしに加えて、グローバルスタンダードに準じたサービスを提供する地域に調和した小規模でも高付加価値な施設を含めて考えている。ハード面の一方でソフト面も重要で、施設の誘致に加えて宿泊施設における人材育成が急務だ。今年度、世界のラグジュアリーホテルなどの格付けを毎年行っているフォーブストラベルガイドと連携し、地方の宿泊施設を中心にグローバルスタンダードに基づく研修を実施して人材育成を支援していく。対象施設は選定中だが、選定された施設を一つの成功事例として世界レベルのサービスができる人材の育成につなげたい。
――世界レベルの宿泊施設について、ハード、ソフトの基準を示したり、格付け制度を導入したりする考えは。
国としてどうこうというより、利用者のニーズや要望の中で、そうした目安が必要だということであれば、国のみならず、民間の機関を視野に入れながら、第三者的な観点で評価できるような仕組みが求められる可能性はあろうかと思うが、今のところ具体的にそこまでには至っていない。ただ、必要性が出てくる可能性はあるかと思う。
――施設整備に関する資金の調達には、財政投融資など国が支援を行うのか。
具体的な整備手法として財政投融資ということについて、一時期そういった話もあったが、今、具体的に進んでいるかというと、動きとしては承知していない。ただ、実際問題として、施設を整備するとなると金融的な枠組みというのは非常に重要だ。
――施設の誘致に関して事業者と地域のマッチングを国が支援するのか。
官邸の会議(観光戦略実行推進会議)でも話があったが、ラグジュアリーなホテルを整備するのであれば、地域全体がそうしたホテルを受け入れる心構え、行政の対応を含めて、自然環境の保護など施策の総合的な受け皿がないと進出しにくい。そういう意味でそうしたマッチングは今後重要になる。国としてお手伝いする、主体的にやっていくという観点から検討していく必要がある。