国連貿易開発会議(UNCTAD)が1日に発表した報告書によると、新型コロナウイルスの感染拡大によって4カ月ほど停滞していた世界の観光産業は少なくとも、世界の国内総生産(GDP)の1.5%に相当する1兆2千億ドル(約129兆円)の観光収入を失うと試算した。
報告書では、仮に世界の観光が8カ月停滞し続けた場合の損失額は2兆2千億ドル、12カ月停滞し続けた場合の損失額は3兆3千億ドルに拡大すると想定している。
想定される損失額の大きさを国別に見ると、アメリカが最も大きく、中国、タイ、フランス、ドイツと続き、日本はイタリアに次いで9位となっている。人気の観光地を有するヨーロッパ諸国やアメリカへの影響も大きいが、観光業への依存度が高いタイやジャマイカ、クロアチアなどではGDPの10%前後の甚大な損失を想定している。それに伴って発生する、観光業従事者の賃金の低下や失業についても懸念を示した。
世界の観光業の現状に関しては、「観光がゆるやかに再開している国が増えても、一部の国では封鎖措置や移動制限が続き、さらには消費者の収入の減少や、多くの人が旅行に対する不安を抱いていることもあり、多くの国で観光が停止している」と指摘した。
報告書でUNCTADは、「観光業は、旅行者が旅先で求める商品やサービス、飲食物や娯楽など、多くの分野に波及効果をもたらしている。観光を支える人々とコミュニティにとって最悪の状況を回避するために、損害を受ける可能性のある国の政府は、社会的な保護を強化すべきだ。また、観光業に携わっている多くの労働者を保護するべきだ」とまとめ、各国政府による観光業の保護を訴えた。