リョケンが経営指針、今年は「再起再興の時代」


 コンサルタントのリョケンは昨年12月に開いた旅館大学セミナーで平成22年の「旅館の経営指針」を発表した。それによると、同年は「再起再興の時代」として、「創業の精神に立ち返って、従来の考え方や行動様式をいったんリセットし、『今一度、自社を起業する』『再び会社を興し直す』姿勢が必要」と説いている。指針の要旨を紹介する。

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 旅館業は立地・環境を生かして建物・施設をつくり、地域性・郷土色を生かした料理を提供してきました。旅館業は地域に根ざした存在であり、サービス業として分類されているものの、流通業や旅行業などとは異なり実体のある事業です。

 これからも、地域に根差して何百年と続いていく事業です。

 再起再興の時代、日本旅館の原点を考えてみましょう。

 日本旅館の原点は奈良朝の時代にさかのぼると言われています。宿泊業としての旅館業が1300年にわたって存続したのは、時代の変遷のなかで、変革を重ねてきた結果です。

 しかし、現実には多くの旅館が経営の難局にあり、経営の舵取りに迷っているのが実情です。

自館(自社)の社是・経営理念を明確にしましょう
 道に迷ったら、来た道を再確認することが賢明といわれるように、経営の舵取りに迷ったら、自館の原点に立ち戻ることが大切です。

 そのためには、経営理念(あるいは社是)を振り返るべきだと思います。経営理念や社是がなければ、家訓や先祖の言い伝え、創業者のことばを思い起こすのもよいと思います。あるいはご自身の就業当時のことを思い起こして、事業の目的を整理するのもよいでしょう。

 なぜこの仕事をしているのか、どのようにして社会に貢献していくのか、利他の精神をどのように発揮して、自らも存続していくのかという経営目的・経営の大義を掲げて、役員・社員の働く拠りどころにするべきと思います。

 それが、経営理念です。

何をなすべきかを再確認し、改善・改革を実行する
 企業の存在意義や事業を継続していく目的を、経営理念として確立したら、それを視点として、まずSWOT分析を行います。

 「SWOT」分析とは、自社の経営環境を、内部環境(経営資源)と外部環境とに分け、前者をS(Strengths=強み)とW(Weaknesses=弱み)、後者をO(Opportunities=機会)とT(Threats=脅威)にそれぞれ整理して分析する手法です。

 SWOT分析に基づいて、伸ばすべき長所、改善すべき短所を整理して、自社の立地・沿革・企業の規模・経営資源(ヒト・モノ・カネ・ノウハウ)により、自館(自社)の経営方針を確立します。

 お客さまに喜んでいただきたいこと、提供したいこと(分野)を選択したら、次にそれをより効果的に実現するための努力(経営資源)をこれに集中します。

 これを「選択と集中」といいます。例えば、(1)従来の宿泊と日帰りの二本立て営業から宿泊を選択して、宿泊に関する機能やサービスを充実させ、人員配置などの経営資源も集中的に配分します。販促活動もこれに重点をおきます。

 (2)旅館から料亭や和風レストランに進出してきた企業では旅館以上に厳しい環境の外食事業から撤退し、経営努力を再び旅館業に集中されるケースもあります。事業分野の選択と集中の例です。

 「省略と強調」という考え方もあります。自館(自社)のサービスのなかで、取り止めたり、他の手段に置き換える際に、お客さまから不満を持たれないようにするため、あるいは省力化の印象を持たれないようにするために、別の方法を強調する考え方です。

 身近な例を挙げてみましょう。

 (1)食事の部屋出しを広間等の会食場で料理提供にする代わりに、料理人がお客さまの前で実演したり、料理の取り分けと説明をして印象づける。

 (2)わざわざ食事会場に来ていただくために、バイキングで数十種類の中から好きな料理を選んでいただけることを強調する。

 (3)客室での呈茶を省略する代わりに、ロビーや茶室での呈茶の演出を強調する。

 このように「選択と集中」「省略と強調」をベースにして改善を積み重ねていくことをおすすめします。

 小さな改善を何度も繰り返すうちに、他を圧倒するレベルに達することができます。「改善してだめだったら、別の方法でまた改善」「改善して少し良くなったら、さらに改善」これを繰り返していけば、立派なイノベーションです。

 
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