メタ観光推進機構 代表理事 牧野友衛氏に聞く

  • 2022年2月7日

牧野氏

「メタ観光」の潜在力

場所の価値情報を見える化 日本全国を観光スポットに

 

 ――「メタ観光」とは何か。

 「場所の価値情報を『見える化』する新しい観光の概念だ。地域の観光資源の価値を文化的・歴史的意義だけでなく、『アニメの聖地』や『インスタ映え』などさまざまな角度で捉え、それを複数の階層・多層レイヤーとしてオンライン上のメタ観光マップに落とし込んで可視化し、旅行者が無料で地図やガイドブックのように使える環境を整えたい」

 「観光にはさまざまな形態が存在していて、それぞれに独自の呼称がある。例えば、農村や漁村に滞在するグリーンツーリズム、文化遺産や自然遺産を巡るヘリテージツーリズム、アニメや映画などの舞台やモデルになった場所を訪れるコンテンツツーリズム、人類の負の歴史をたどるダークツーリズムなどだ。『メタ(meta)』には『高次の』『超える』という意味があり、接頭語として使うと、『俯瞰的にものを見る』『一段高い所に立って考える』といったニュアンスになる。メタ観光は、〇△ツーリズムといった個別の観光形態よりも一段上位、つまりメタにある観光概念と定義した。メタ観光では、それぞれの観光形態を、場所に対して観光的価値を付与する意味のレイヤーとして捉える。例えば、ヘリテージツーリズムであれば、その場所には文化遺産という観光価値があることを示す意味のレイヤーになる。そうしたレイヤーを、位置情報を使うことで一つの場所に複数重ねて提示し、観光客に重層的な観光を体験してもらうのがメタ観光だ」

 

 ――牧野さんは、グーグル社でGoogleマップやYouTube日本版の開発、ツイッター社でTwitterの国内の利用者拡大の責任者を歴任し、トリップアドバイザー日本法人の代表を4年間務めた。メタ観光の実現には何らかのプラットフォームが必要だと思うが、そこはどう解決するのか。

 「情報化が高度に進んだ今日、社会のさまざまな領域に変化が訪れている。観光も社会の変化に応じたアップデートが必要な分野の一つだ。スマートフォンの出現により、観光のあり方は一変した。SNSや口コミサイトで情報を取得し、人気の観光地やレストランを訪れるスタイルが定着した。旅の間も遠く離れた場所にいる家族や友人たちと、SNSやメッセージングアプリを介したオンラインでのコミュニケーションを行う。観光の目的が、こうしたコミュニケーションである場合さえある。スマホの地図サービスは、ガイドブックに掲載されていない場所を見つけて訪れることを可能にし、アニメ聖地巡りや写真映えするスポットを目的とする新たな観光の形が広がった。そしてポケモンGOに代表されるスマホ向け位置情報ゲームアプリの登場により、リアルな世界だけでなく、バーチャルな情報を目的とした観光も生まれた。確かにメタ観光は共通のプラットフォーム上で展開するのが理想的だ。そのため、メタ観光のモデルイメージ、プロトタイプを作った。これを日本全国に横展開できればと考えている」

 

 ――メタ観光推進機構は、昨年9月から12月まで、文化庁の「ウィズコロナに対応した文化資源の高付加価値化促進事業」で、墨田区と「すみだメタ観光祭」を共催した。

「同事業の中で『すみだメタ観光マップ』(https://www.sumida.metatourism.jp/map)を作った。事業終了後もコンテンツを残すため、uMAPというフリーの地図プラットフォームを使って構築した。世界中のボランティアによって運営されている、ウィキペディアの地図版のようなものだ。コンテンツは今後も進化させていく。AR(拡張現実)の実装も構想中だ」

 

 ――メタ観光で何が変わるのか。

「それぞれのスポットには何らかの意味がある。メタ観光では、場所の価値情報を見える化するため、必ずしも新たに文化・観光資源を作る必要はない。日本中のあらゆる場所が観光スポットになり得る。『100万人を集める1カ所から、1万人を集める100カ所へ』『マスから個性へ』の転換が起こり得る。ウィズコロナ時代の分散型観光、マイクロツーリズムに対応した観光が実現できる」

 

 まきの・ともえ 1995年文教大学人間科学部卒業。NTTドコモ、AOLジャパン、Google、Twitterを経て、2016年9月から20年11月までトリップアドバイザー代表取締役。同11月に一般社団法人メタ観光推進機構を設立し、代表理事に就任。日本政府観光局(JNTO)デジタル戦略アドバイザー、東京都の観光振興を考える有識者会議委員も務める。48歳。
【聞き手・江口英一】

 

メタ観光の概念図

     
 
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