ホテル事業拡大の狙い ベルーナ執行役員 開発企画本部長 安野 洋氏に聞く


ベルーナ執行役員 開発企画本部長 安野 洋氏

成長、利益見込める分野 積極投資、地域活性化も

 通信販売大手のベルーナ(埼玉県上尾市)は、同社が展開するホテル事業を収益性の拡大を担うグロース領域に位置付け、投資を拡大している。その狙いと今後の展開などを執行役員開発企画本部長の安野洋氏に聞いた。

 ――ホテル事業に参入したきっかけは。

 「ホテルを開業する前から不動産、資産運用といった事業を手掛けており、その流れの中で2006年に渋谷グランベルホテルを開業することになった。代表取締役社長の安野清がホテル事業に大変興味をもっていたためだ」

 「併せて、事業の多角化を推し進める狙いもあった。現在の当社の売り上げのシェアは、アパレル・雑貨事業がトップで、2位が食品、ワイン、日本酒などのグルメ事業、3位が不動産、ホテルのプロパティ・ホテル事業で、近年、急成長している」

 ――ホテル事業が成功した理由は。

 「例えば、渋谷グランベルホテルは、デザイナーズホテルを意識した設計となっているが、ラグジュアリーホテルに比べ、かなり割安に宿泊できる点などが受け、インバウンドや大使館勤務の外国人客などから支持をされた。これをきっかけに、ホテル事業を拡大していった。プロパティ・ホテル事業の前年度の売上高は約320億円で、営業利益約43億円。今年度は同366億円、同54億円を目指す。ホテル事業は、成長性、利益率が見込める分野と捉えており、今後も積極的に投資をしていく考えだ」

 ――現在の施設数は。

 「合計22施設だ。そのうち、都市型(宿泊特化型)が14、リゾートが7、旅館が1となっている」

 「旅館の優香苑(岩手県)は社長の安野が気に入って13年に取得し、かなりの投資を行いリノベーションした。その結果、売り上げが倍増し、リゾート系への投資を拡大。15年には裏磐梯レイクリゾート(福島県)を取得した。前オーナーは、食事を含めたオペレーションを他社に任せ、セントラルキッチンで提供していたが、裏磐梯レイクリゾートを取得したころから食事は自社で出すようになった。自社に切り替えてからは地元産の食材にこだわった食事を提供している」

 ――事業拡大にあたり重視している点は。

 「リゾートは北海道の定山渓などでも展開しているが、当社は立地、例えば自然との融合が素晴らしいかといった点を重視している。都市型はロビーや共用スペースを広くし、お客さまから宿泊料金に比べ、より満足度が高いと思っていただけるような居心地の良い空間づくりを心掛けている」

 ――今後の展開は。

 「来年4月に、北海道の札幌に、札幌ホテルbyグランベルを新築オープンする。byグランベルは当社ホテルの中で2番目の高級ブランドの位置付けで昨年、東京・銀座にオープンした銀座ホテルbyグランベルに続く第2号店だ」

 ――施設の概要は。

 「26階建てで、全605室。1924人を収容する。スタンダードルームの広さは24平方メートルから。外観は全面ガラス張りのグラスウォールを採用した。25階には天然温泉を引き上げた露天風呂付き大浴場を、26階には高さ100メートルからの夜景を満喫できるレストランを開業する」

 「7月には、同じく小樽市に小樽グランベルホテル(159室)を開業予定だ。小樽運河沿いに立地し、小樽の文化や歴史との調和を目指したデザイナーズホテルとなる」

 ――現在、業界では人手不足が深刻な状況だ。

 「DX対応はもちろん、客室テレビは館内インフォメーションシステムと連動しており、フロントに問い合わせをしなくても、館内の情報が分かる。併せて、全スタッフがすべての業務を行うマルチタスクを推進し、最低限の人員で業務を回している。稼働を抑えることはない」

 ――地域活性化に積極的と聞いた。

 「ホテルは競合があるため安売りをしてしまう傾向があるが、それでは地域の活性化につながらないと思っている。適正価格の宿泊料金を払っても満足度が上がるような地域にする必要があり、ホテル単体ではなく地域全体の魅力を高める活動を行っている」

 「例えば、福島の裏磐梯は海外での知名度が低いため、行政とタッグを組んで、海外まで足を運び営業活動をしている。また、循環バスで、スキー場と温泉地をつなげる取り組みも行った。冬季のため、車が使えないといったインバウンドを中心とした消費者の利便性を高めるためだ」

 やすの・ひろし 2002年、立命館大学卒業。外資系保険会社アリコジャパン入社。05年ベルーナ入社。11年から現職。45歳。

【聞き手・西巻憲司】

 
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