ホテルおかだ、AI・データ活用で変革


ホテルおかだの原氏が講演

 国際ホテル・レストラン・ショーと同時開催の「サービス産業向け次世代技術EXPO」の2月21日のセミナーで、神奈川県箱根町、ホテルおかだ常務取締役営業部長の原洋平氏が「おもてなし強化のためのAI導入・データ活用による経営革新~箱根湯本 老舗ホテルの変革~」と題して講演した。

 ホテルおかだは、原氏の祖父母が1953年に4室で創業。社員数130人、総客室数122室、収容667人、年間宿泊人数12万人の大型旅館だが、「団体集客だけでは経営が難しくなってきたため、露天風呂付き客室を整備するなど個人客向けの対応を強化し、客室稼働率は90%を確保している」という。

 エンジニア出身の原氏は、「遅い」「情報が少ない」「信ぴょう性が低い」といった社内営業報告書の問題点を解決するため、無料のセルフサービスBI(ビジネス・インテリジェンス)ツールを導入。エクセルファイルなどのデータを瞬時にグラフ化、可視化できるようにした。その結果、「経営戦略策定では、スピードアップと精度向上。社内の打ち合わせでは、生産性向上とマネジメントの知識レベルアップ」を実現した。

 新たな経営課題も浮上した。団体客から個人客へのシフトを進めた結果、予約の小口化が進み、件数が7年間で66%増加。また、オンライン予約化が進んだ結果、キャンセル率は28%から35%に上がってしまった。

 オンライン予約件数の増加によりスタッフの作業量が増大、時間外や外国人からの問い合わせも増え、新たな対応を迫られた。「環境変化、戦略変更によってボトルネックが移動した」と分析。複雑化するオペレーションに対応し、顧客満足度も向上させる手段としてAI(人工知能)の導入を決断した。「ITを活用してたくさんのお客さまに高級旅館並みのサービスを提供したい」という思いもあった。

 AIは、ホテルおかだ公式サイトのFAQ(よくある質問)に導入。全ページからポップアップ式のFAQに遷移可能とし、AIが選別した価値あるFAQを提示するようにした。リピーターや予約済み客には一般向けより詳しく、その顧客が望んでいると思われる内容のFAQを表示させる仕組みにした。アンサー(回答)参照数や検索ワードなどもレポートで参照できるため、FAQの参照・検索状況を分析し、新しい情報を付加するなど常に改善、進化をさせているという。

 「生産性とサービス向上を目指してFAQにAIを導入して約半年たつが、お客さまからの問い合わせの件数は減るどころか増えてしまった。FAQで詳しい情報を得られるようになったことで、『質問』ではなく、『お願い』の連絡が入るようになった。18年の売り上げは前年比17%増を達成しており、AIの導入効果は高かったと言える」と結んだ。


ホテルおかだの原氏が講演

 
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