ナショナルセンターの機能果たす  日本観光振興協会 理事長 最明 仁氏に聞く


日本観光振興協会 理事長 最明 仁氏

「D-NEXT」の活用を “外”向けに広報活動強化

 日本観光振興協会の理事長にJR東日本出身の最明仁氏(60)が6月13日付で就任、抱負を聞いた。

 ――改選期ではない中での理事長就任です。

 「さまざまな理由があったかもしれません。ただ、観光の仕事から10年ほど離れていたので、話があった時は正直驚きました」

 ――日観振という組織はご存じでしたか。

 「実は前身である日本観光協会と日本ツーリズム産業団体連合会(TIJ)の統合の際にいろいろと関わっていました。顔なじみの方も多く、私自身は協会に対して違和感はないですね。職員の方がどう受け止めているのかは分かりませんが(笑い)」

 ――日観振はどんな組織だと。

 「観光業界のナショナルセンターと認識しています。業界の知名度アップや地位向上に努め、また政策提言などを通して業界が抱える課題解決に向け取り組む組織です。自治体の首長や各業界団体のトップなどが会員として名を連ねていますが、ベクトルを合わせて外に対し発信、提言などの事業活動を強力に展開していきます。観光庁長官、JNTO理事長も時を同じくして変わりましたので、コミュニケーションをとり、よい関係を築きたいと思います」

 ――コロナで業界は大きなダメージを受けました。

 「観光は人との交流によって成り立つ産業ですが、その動きが止まったというか、否定されました。非常に苦しみましたが、一方で、テレワークやオンライン交流など新しい動きもあり、観光の可能性を感じさせました。現状、完全に回復したとはいえず、インとアウトのバランスの悪さも気になるところです」

 ――23年度事業については。

 「(1)基幹産業としての観光の再生(2)観光の価値創造とイノベーションの追求(3)持続可能な観光に向けた課題解決(4)協会職員の働きがい創出―の4本柱を中心に展開します」

 「DMOの仕組みができて10年ほどたちますが、人材育成の必要性を強く感じています。国際基準に照らし合わせた観光地域づくり、観光コンテンツの仕組みを作りたいと考えています。現在、世界のDMOで導入されている『D―NEXT』を活用した観光地域診断を実施しており、他国に乗り遅れないようリードしていきます。先日、米・ダラスで世界のDMOが参加するD―NEXTの国際会議があり、協会の広報ツールでも様子をお伝えしたところです」

 ――業界は人手不足が深刻で、確保するには魅力発信が欠かせません。

 「10月に大阪で開催される『ツーリズムEXPOジャパン』では、観光系の大学や専門学校にブースの出展を呼び掛けています。これまで高校生までは入場無料としていましたが、枠を広げ、今年は大学生・専門学校生も無料にします。会場へ足を運んでもらい、業界の魅力、素晴らしさを知っていただきたい。人手不足解消に少しでも役立てばと考えています」

 ――JR東で特に印象に残っている出来事は。

 「私は国鉄最後の入社組です。分割・民営化で先が見えないスタートだったのですが、新しいことにチャレンジするという熱量がとても大きかったのが今でも忘れられませんね」

 「JR東のエリアは関東、甲信越、東北で、各地に新幹線という高速鉄道網を有しています。私自身、東北新幹線の八戸延伸、秋田新幹線のダイヤの策定や車内サービス、販売戦略に関わりました。また、湘南新宿ラインは草案作りから輸送計画立案、宣伝まで一貫して携わりました。どちらもよい思い出です」

 「現在のJR東日本びゅうツーリズム&セールスの前身、びゅうワールドにも出向しました。海外旅行専門会社だったのですが、出向時はSARSがまん延し、海旅需要が消滅しました。そこで、インバウンド事業を立ち上げ、会社の中に受け入れや営業部署を作りました」

 ――趣味は。

 「鉄道が好きすぎて国鉄に入りました。典型的な鉄っちゃんです。また、JR東日本交響楽団ではビオラを弾いています」

 ――会員、業界にメッセージをいただきたい。
 
 「アフターコロナでは同じ轍(てつ)を踏まないよう、足腰が強くなければなりません。外からの応援が必要です。そのためには理解、協力してもらえるよう、協会としても広報を強化したいですね。皆さまにもぜひご協力をお願いできれば幸いです」

 

さいみょう・ひとし=1985年国鉄(現JR東日本)入社。総合企画本部観光戦略室長、ニューヨーク事務所長、執行役員国際事業本部部長などを経て、2020年6月から常務執行役員国際事業本部長。23年6月から公益社団法人日本観光振興協会理事長。

【聞き手・論説委員 内井高弘】

 

 
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