トップツアーが新しい形の被災者支援に取り組み始めている。宮城県気仙沼市の舞もう根ね湾を拠点に、同地の主要産業であるカキ養殖のための環境づくりに取り組んでいるNPOと連携。津波被害を受けた港湾上流の森林のガレキ撤去や、養殖イカダの整備を行うボランティアツアーを企画、催行し、養殖業と環境再生を長期的に支援する。カキを中心とした自然サイクル全体の再生を支援するボランティア活動を行うことで、一過性でない支援活動を一般消費者や法人団体などに働きかけ、ひいては地元経済の再生につなげたい考えだ。
上流での植林などを通してカキ養殖に必須の肥沃な水づくりに取り組んできたNPO「森は海の恋人」(畠山重篤代表理事)と連携した。
第1弾となるツアー「『森は海の恋人』復興ボランティアツアー」は、9月16日夜に首都圏を出発する2泊3日の日程で催行。2日目に岩手・一ノ関から気仙沼市の唐桑地区に入り、舞根湾に注ぐ舞根川上流の森のガレキやごみの撤去や養殖イカダ固定用の土俵づくりを行う。海中の種ガキの生育状況の観察なども行う。宿泊は気仙沼市中心部のホテルを利用。地元の海の豊かさを知ってもらうなどの目的で夕食のメニューには可能な範囲で地元の食材を利用することも検討している。「気仙沼市内に宿泊することは、シニア層の参加を容易にするだけでなく、被災状況や復興の現状を間近で知ってもらうことにもつながる」と土屋勇・同社旅行業務本部事業開発部事業開発課課長。3日目には、世界文化遺産に登録された岩手・平泉の中尊寺などの観光も行う。東京〜一ノ関の往復には新幹線を利用する。
同社では同ツアーを毎月3回程度継続的に催行し、長期的な応援、支援を続けてほしいとの地元の要望にこたえる考えだ。
米田稔・同部部長は、「地元の主要産業であるカキの養殖業が周辺環境の復旧も含め完全に再生するまでには、少なくとも2、3年はかかる。幅広い年代の一般消費者や法人団体などにも広く参加を呼びかけたい。支援事業が同地域のカキのファンづくりだけでなく町の再生の一助になれば」と語る。
津波の被害を受けた森林の復旧作業の様子