景気低迷や新型インフルエンザなどの影響に悩まされた観光業界が、19日からの5連休「シルバーウイーク」(SW)に期待を寄せている。旅行会社の予約状況は前年同期と比べ軒並みアップしており、「秋の行楽シーズンを前に、幸先の良いスタートが切れた」と表情は明るい。旅行会社や各地の観光協会、旅館組合などに手ごたえを聞いた。
旅行会社
「SWが9月の数字を上げている」とJTB。沖縄や北海道などロング方面の7〜9月は前年同期比80%台と良くないが、19〜27日出発(首都圏発エースJTB)に限ると、沖縄は114%、北海道149%、九州161%となっている。昨年、地震の影響で落ち込んだ東北は反動もあり363%の伸び。
「海外は予約が取れない状況だが、国内は日程を工夫すれば予約が可能だ。間際申し込みに対応し、追加で廉価版商品を投入していく」という。
近畿日本ツーリスト(KNT)のSW期間のメイトの予約状況は、昨年の9月13〜15日に比べ人員ベースで210%。伸び悩んでいる北海道・沖縄、九州も前年を超える状況だ。9月全体では、8月末時点で110%と好調。首都圏発では四国(137%)が人気という。またファミリー向け商品が137%。「8月の夏休みを9月にシフトした人も多いからでは」と同社は見る。
日本旅行の赤い風船。7月は人員ベースで前年同期比85%、8月84%と低調だったが、9月は114%と2ケタ増(8月24日現在)。方面別では東北(174%)、九州(142%)、中部・信越・北陸(128%)方面の伸び率が高い。
8月18日にはインターネット上で「まだ間に合う!SW秋の大型連休売り尽くし」として、既存価格より10〜25%値下げした商品を追加発売した。
トップツアーは、伊豆、箱根など関東周辺の温泉商品が好調。SW以外の土日は対前年80%ほどだが、「SW期間は前年より3割ほど伸びている」という。
「SWの集客状況は8月16日現在で前年同期比約110%」と言うのは阪急交通社。SWのメリットについては「あると思うが、毎年ではないので、SWとして定着するかは未知数」と見る。
クラブツーリズムは日帰りや宿泊バス旅行などをメーンに、一部の商品を「5連休特集」として打ち出し「9月全体で前年同期比105%程度」となった。温泉連泊のフリープラン型商品(東北・上信越・伊豆方面で往復JR利用)が好調で、予想される道路渋滞を避け、忙しい移動の旅よりも旅先でゆっくりしたいという志向の現れではないかと見る。「SWは、新たな需要喚起や長期旅行につながる。秋の最ピーク期の前でもあるという意味ではメリットはある」としている。
「19〜22日出発で前年比約110%となっている」とJALツアーズ。北海道、東北、中部、関西、九州方面などが好調だ。ANAセールスによると、ANAスカイホリデーの9月の状況は前年比105%。北海道、九州、関東などが伸びている。「ファミリー向けの『ピカ夏家族旅行』やグループ参加特典を充実させた『北海道へ全集GO!』が堅調」という。
温泉・観光地
連休期間の観光地・温泉地の宿泊予約は順調だ。9月19〜22日は「満室」、または「満室に近い状態」の旅館・ホテルが多いようだ。経済の先行きへの不安や余暇の過ごし方の多様化はあっても、秋に5連休があるというインパクトは大きく、国内旅行需要の喚起につながっている。
「問い合わせは夏休みのうちから多かった」(大分・由布院観光総合事務所)など、各地ともに早い時期から宿泊予約や問い合わせが入った。昨年秋以降の景気の悪化に加え、新型インフルエンザの風評に影響を受けた地域もあるだけに、話題性の高い秋の5連休は好材料となった。
富山県・宇奈月温泉では、19〜22日が各宿とも満室の上、9〜10月の土曜もほぼ満室という。「例年になく好調」(同温泉旅館協同組合)。鳥取県・皆生温泉でも「特に前半の動きが良く、19〜21日はほぼ満室。連休前後の土曜も例年並み」(同温泉旅館組合)。
高速道路のETC割引も追い風になっているようだ。連休期間の宿泊予約が順調な青森県・浅虫温泉では、「5連休の効果はもちろん、ETC割引の影響からか、人の動きが感じられる」(同温泉旅館組合)という。
さらに間際まで動きが出そうな状況にある。「連休期間はすでに予約で埋まっているが、今でも問い合わせは多い」(兵庫・有馬温泉総合案内所)などの声が聞かれる。
5連休を歓迎しつつ、需要の集中に対する不安もある。「連休期間以外の予約状況が良くない。ETC割引の導入以降、平日需要まで土・日曜に流れている感触を受ける。総需要の拡大につながっていないのでは」(石川県・山代温泉観光協会)。「5連休以外の9、10月の土曜には空きもあり、一極集中の感はある」(北海道・登別観光協会)。
ただ、秋の5連休が再び実現するのは、現行法では2015年となる見込み。休暇制度が変わらない以上、秋季の集客は課題だ。「リピーター化や新規客開拓に努力し、平日の集客につなげていく必要がある。今後も新商品の開発やイベントの展開を工夫したい」(愛媛県・道後温泉旅館組合)。