
(左から)小関講師、塩月副学長、臺教授
跡見学園女子大学(東京都文京区、小仲信孝学長)は9月5日から、観光関連事業者の経営力向上を図り、観光の活性化につなげる「観光経営人材育成講座」を開講する。「コロナ禍での観光の未来を考える:インバウンドのセカンドステージでの課題と人材育成~防災、自転車、島嶼、ジェンダー、異文化理解、ハラール対応~」がテーマで、受講料は無料。講座開講の狙いや内容を、講座をコーディネートする塩月亮子副学長、観光コミュニティ学部観光デザイン学科の臺純子教授、小関孝子講師に聞いた。
(左から)小関講師、塩月副学長、臺教授
大学ならではのアカデミックな知見を
――講座について改めて。
塩月 東京都と連携して、観光経営人材の育成を目的に行っているもので、一昨年、昨年に続き、今年で3年目になる。
対象は東京都内に勤務、または在住の、宿泊、旅行業、運輸、観光施設など、観光関係に従事する人。これらの職種に従事する予定の学生も対象となっている。
――昨年の振り返りを。
塩月 第1講座はコロナ禍からの回復を見据え、「ただ、コロナ禍前に戻すだけではいけない」と、観光業界の未来に向けた経営戦略を講義。
第2講座はLGBTQなどダイバーシティ(多様性)を踏まえた企業経営を講義した。
第3講座は多様性の中でも、特にムスリム観光客に必要なハラール対応を前年に続いてテーマに掲げた。
臺 昨年、コロナ禍が落ち着きだし、業界がようやく動けるような雰囲気になってきた中で、「早くコロナ前に戻ってほしい」というコメントがメディアで多く流れた。しかし、「コロナ前に戻るだけでは駄目だ」「その先に行くために何が必要だろう」と他の先生とともに考えていた。第1講座はその思いをもとに企画をし、観光立国の先進地、フランスの事例などを専門家の講師にお話しいただいた。
小関 昨年、一昨年と、ジェンダーに関わる講座のコーディネートを行った。接客の現場で働く人へのヒントになればと思い、また従業員にも多様な人たちがいるので、マネージャーがこれらの人たちをマネジメントする上で必要な基礎知識を習得してもらうことを意識した。
――今年の内容は。
塩月 今年も昨年に続き、第1講座から第3講座までに合計12の講演が盛り込まれている。希望者は全てを受講することはもちろん、自身の専門や興味に合わせて一つの講座だけを受講することもできる。
臺 第1講座はマーケティングの重要性を訴える内容。受講者の疑問に専門家がアドバイスをする双方向の講座としたい。自然災害など不慮の事態が起きたときにどう対応するかなど業界の危機管理や、サイクリストの視点で見た日本の観光の現状についても取り上げる。
小関 第2講座では既に多くのインバウンドが押し寄せている東京の現状と今後について、銀座などナイトタイムエコノミーや東京ドームの事例を講義する。
塩月 第3講座のハラール対応は、ムスリムの人たちに寄り添いながら、彼らが何を望んでいるかを知り、その対応の仕方を学んでいただく予定だ。
――読者に一言。
塩月 コロナ禍で足元を見直そうと、マイクロツーリズムが注目された。今後はその経験や考え方を生かした新たな観光が生み出されるかもしれない。ローカルとグローバルの両方の視点を併せ持った「グローカル」な観光を、今回の講座で考えていければいい。
臺 日本の事業者はマーケティングが弱いといわれている。海外の主なホテルはマーケティングの担当者が必ずいて、修士を取るなど勉強をされているのに、日本はまだ少ないのではないか。
マーケティング的なものの見方や考え方を、日々の仕事の中で習慣づけることが必要なのではないか。そんな私たちの思いを多くの人に伝えたい。
小関 単価の高い宿泊施設が多くできているが、接客のレベルがその金額に見合っているか。スタッフの歴史や文化に対する造詣、知性が求められている。
今回の講座は接客の現場に直接役立つ大学ならではのアカデミックな知見が多く盛り込まれている。従業員のレベルアップに向けて、ぜひキャッチしてほしい。
塩月 第3講座の最終講演は本学文京キャンパスでの聴講も可能なハイブリッド形式で行う。講師と直接顔を合わせて話をしたい人など、ぜひ多くの人に足をお運びいただければと思う。
跡見女子大「観光経営人材育成講座」について
https://www.atomi.ac.jp/univ/activity/detail/10443/
※講座内容
申し込み方法・講座内容等詳細について
■申し込みフォーム
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdyVq_OWesZ3El2ONMFMCfkeJtsRpICRnXUUgTxBS8obGuH2Q/viewform
■問い合わせ先
メールは、跡見学園女子大学 観光経営人材育成講座運営事務局行き