オーバーツーリズムに対策 国土交通事務次官 和田信貴氏に聞く


国土交通事務次官 和田信貴氏

高付加価値な観光で好循環

 7月4日付で就任した和田信貴国土交通事務次官は、観光経済新聞社が加盟している国土交通省交通運輸記者会の共同インタビューに応じた。各部局の連携を重視し、国交省一体で政策を推進していく姿勢を強調。観光分野では、オーバーツーリズム対策やインバウンドの地方誘客のほか、宿泊施設の高付加価値化などの施策を重要視した。

 ――就任の抱負を。

 国交省はいろいろな部局をまたいだ政策の連携に力を入れており、その効果を発揮してきている。私自身、いろいろな分野をまんべんなく仕事をしてきたつもりだ。旧建設省に1987年に入省し、そこから、交通に関する道路、都市などを含めて旧建設省の部局すべてで仕事をしてきた。若い頃には約5年(1995年~)、茨城県庁に出ていたが、その時には主に交通政策や企業立地を担当した。そうしたこともあり、国交省のいろいろな分野が連携し、さらに一体的に仕事、政策ができるよう心掛けていきたい。当然、人を運ぶということなどについて、人の命が一番大事であり、それから災害対策も本当に大事なことなので、これを肝に銘じて、しっかり政策を融合してやっていきたい。

 ――喫緊の政策課題は何か。

 国交省の(2024年度予算の)概算要求の中にも盛り込んだが、まずは「国民の安全・安心の確保」、それから「持続的な経済成長の実現」と「個性をいかした地域づくりと分散型国づくり」。この三つを大きな考え方として出しているので、これをまずは根っこにやっていきたい。

 その中で、特に交通運輸で言うと、一つは物流の問題。年度末に向けて、いろいろ取り組まなければならない。それからGX、DXへの取り組み、そして観光、インバウンドには観光立国の復活という形で取り組む必要がある。そこに合わせて人が足りないという問題が加わってきている。輸送機関である航空も含め、人が足りない中での観光などにどう対応するか。もちろん海上保安も積み重ねていかなければいけない。こうしたことを具体的な分野としてはしっかりやっていきたい。

 ――観光立国復活に向けた課題と今後の取り組みの方向性については。

 課題としては、オーバーツーリズムということも言われている。これを早急に議論して、今、解決策を詰めているところだ。海外から来られる方を含めてオーバーツーリズムの課題を解決しながら進めていかなければならない。

 オーバーツーリズムの対策にもなると思うが、インバウンドには特定の場所に偏るのではなく、地方へと行っていただき、日本の広い意味での本当の魅力、それを満喫してもらいたい。そのための試みを進めていく必要がある。

 併せて、付加価値の高い観光が大事だ。旅行消費額も目標にしているので、旅館やホテルなどの施設の高付加価値化を進め、そしてお客さんにも満足していただき、地域に多くのお金が回っていく、こうした好循環をつくっていきたい。

 ――航空業界における人手不足への対応は。

 人手不足はあらゆる業界に共通のことだ。特にコロナから人の動きが回復してくる中で、グランドハンドリングの部分を中心にして顕在化してきている人手不足は深刻な問題だ。短期的には、これまでの取り組みに加え、足りない人材について、いろいろなことを共同化、共有化していく、こんなことが基本になってくる。その上で外国人の方にも働いていただけるよう、制度的な取り組みもあるので、外国人の方々の力もいただいて、業務が進むようにしなければいけない。

 いずれにしても中期的には、やはりその仕事自体が魅力的なものでない限り、日本の方も、外国の方も、その仕事に従事していかないわけだから、処遇を含めて職場環境が良くなるよう努めていく必要がある。

 ――「海の日」の日程に対する考えは。

 「海の日」は、海からの恩恵に対する感謝と、海洋国として発展していくということを記念する大事な日だ。もともと7月20日だったが、ハッピーマンデー制度で7月の第3月曜日になっている。これには、もともとの意義を大事に考えるべきではないかという意見、観光振興上やはりハッピーマンデーということに意義があるという意見。これらの意見がある。議員立法でできている祝日なので、国交省の役割としては、まずはもともとの「海の日」の意義などを国民の方々によく分かっていただき、そしてそれを周知することで、国民の議論として、どういうあり方がいいのか、ということが醸成されることが大事と考えている。

 和田 信貴氏(わだ・のぶたか)氏 1987年4月建設省(現・国交省)入省。住宅局長、総合政策局長、国土交通審議官。東大法卒。長野県出身。59歳。

【聞き手・観光経済新聞 副編集長 向野悟】

 
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