「女将=着物」のイメージ払拭
「伊香保温泉 日本の名湯」と上毛かるたに詠まれる伊香保温泉(群馬県渋川市)は、万葉の時代から続く歴史ある温泉です。その伊香保温泉旅館協同組合の婦人部が「お香女(おかめ)会」で、組合に加盟する旅館の女将たちで活動しています。
伊香保温泉活性化のためさまざまな取り組みを行っており、その一つに、「石段街おもてなしサービス」があります。1999年から、名所・石段街でのお茶入れサービスとして始まりましたが、コロナ禍を経て、現在は訪れる方におしぼりとあめを渡しています。暑い夏にはおしぼりを凍らせて渡し、大変喜ばれています。
古くから養蚕業が盛んな群馬県には「県立日本絹の里」という施設があります。この施設とのコラボレーション「伊香保温泉×キモノ展」ではお香女会の女将たちが祖母や曽祖母の時代から受け継いできた、思い出深い着物を提供いたしました。
お香女会にも、そろいの着物のユニホームがあります。活動時は皆この着物を着ますが、普段の女将業の合間を縫って開催するイベントのたびにこの着物に着替え、各旅館に戻ってまた着替えて、というのは簡単なことではありません。
もちろんこれまで培われてきた旅館における着物文化も大切です。ただ、一番大切なのは、お客さまをおもてなしする心です。そこで、「女将イコール着物」という従来の考え方をやめ、お香女会のイベントでは、女将たちの洋服参加もOKとしたところ、会員の参加率がアップし、イベントがより盛り上がるようになりました。各旅館同士の協力体制がより強固になったと感じています。
また、群馬女将の会という県全体の組織にも参加することで、県内の他の温泉地との情報共有を行い、各地の特徴を生かしたまちづくりを学び、取り入れております。特徴ある温泉地にするため、まず、各旅館の独創性ある旅館運営によって魅力度を高めていく必要があると思います。
私が女将をしている「如心の里ひびき野」では、旅館でキャンプができる「旅(りょ)キャン」を行っています。施設内にテントやオートキャンプサイト、炊事場やカフェ、サウナ、ドッグランがあり、キャンプを満喫しながらも旅館の温泉等の施設もゆっくりとお楽しみいただけます。
群馬県は「かかあ天下」といわれますが、これからも私たち女将が中心となって、より一層、伊香保温泉、ひいては群馬県の観光を盛り上げていきたいという思いで、今後も活動を続けてまいります。
如心の里ひびき野 女将 養田博美氏