【withコロナ時代の旅館経営への提言】「安心」視点に受入れ 立教大学観光学部観光学科 教授  橋本俊哉氏


橋本教授

 観光行動は心理的要因に大きく左右される。感染者が増えれば予約のキャンセルが増えてしまう。お客さまは、感染者の動向に左右されながら徐々に戻ることになるので、影響の長期化は避けられないだろう。

 回復段階で増えるであろう観光旅行タイプは、「近場への日帰り、1泊旅行」「なじみの宿への旅行」「海外旅行を自粛することによる代替旅行」の三つだ。

 近場への旅行は、自家用車で移動できる家族や小グループ単位の旅行。なじみの宿は、頃合いをみて、主人や女将の励ましを兼ねて会いに行くタイプである。代替旅行は北海道や沖縄が有力な目的地となろう。

 内容的には、近場のアウトドアレジャーや自然体験に加え、時の流れを楽しむような過ごし方への志向が高まるので、滞在の質が今以上に求められるだろう。

 お客さまを受け入れるにあたっては、まず「安全」と「安心」を分けて考えなければならない。

 「安全」については、感染症の専門家が指摘する衛生管理に真摯(しんし)に取り組むことだ。お客さまの衛生に対する意識が高まり、より一層のレベルが求められる。

 こうした安全への取り組みが理解されてこそ、お客さまは「安心」することができる。「消毒済み」と書かれた袋で包まれたコップなどは、清潔であることを可視化する仕組みである。お客さまの不安を払拭(ふっしょく)し「安心」して滞在してもらうために、今後、どのような仕組みや説明が、より求められるのかという視点から、受け入れ態勢を改めて見直す必要があろう。

 また、「安心」を感じてもらうためには、お客さま自身の協力も必要不可欠だ。意識が低いお客さまにも協力してもらうよう、宿側が誘導することだ。

 ソーシャルディスタンスと盛んに言われるが、サービス時にお客さまと、どう距離をとるかも重要だ。距離によって相手が受ける印象は異なるので、違和感を感じない距離の取り方に留意しなければならない。

 万一、自館が感染源になってしまうと、影響は長期化するのみならず、地域全体のダメージにもなってしまう。地域全体で予防策を共有し、一丸となった取り組みが求められる。

 災害後に回復が早いのは、常連客を大切にしてきた宿だ。多くの宿の中から宿泊先として選んでくれた今日のお客さまを、感謝の気持ちを忘れずにもてなすことが、何よりも重要だ。

 健康増進の基本は「十分な睡眠」「バランスの取れた食事」、そして「適度な運動」である。宿泊業は、それら全てをお客さまに提供できる素晴らしい仕事だ。

 これからも滞在の質を上げる努力を怠らず、お客さまを元気にする仕事であることに誇りを持ち、日々取り組んでほしい。

橋本教授

 
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