1泊朝食や素泊まりの予約が増えているという声を聞く機会が増えた。最大の要因はインバウンドの増加ではあろうが、日本人の旅行スタイルも、昔ながらの旅館で1泊2食付きだけではなく、夕食は地元の居酒屋やレストランで食べて、旅館では宿泊だけという層は確実に増えていると思われる。今後、さらにインバウンドが増加していく流れの中では、旅館においても1泊朝食や素泊まりのニーズは増加していく傾向になると想定されるので、対応することは一つの集客対策にもつながることであろう。
1泊朝食付きや素泊まりを出して、まず確実に受ける質問は「どこか近隣でおいしい店はないか?」だ。あらかじめ分かっているのであれば、お客さまに提示しておくのが親切である。また、お問い合わせの電話も減るので、業務負荷の軽減にもなる。代表的な対策は「グルメMAP(近隣飲食店MAP)」の作成である。おそらく、用意している旅館も多いであろうが、日本語で、しかも紙のみで、というケースが多い。それをHP上で掲載したり、多言語化したりすることが今の時代には求められている。お客さまも地元のおいしいお店で食事をしてみたいが、情報が不足しており、地元の人に聞いてみたいという顧客心理がある。地方に行くほど、グルメ情報サイトの情報も少なくなるので、「地元民が自信を持っておすすめするグルメMAP」などがあれば、魅力的なコンテンツになり得るであろう。
また、協力的な外部飲食店があれば、提携した宿泊プランを設定することも有効である。旅館にとっては、新たな夕食プランを打ち出せることにもなり、地域にとっては飲食店が活性化するのでプラスに作用する。
もちろん、1泊朝食が増えているからといって、現在1泊2食付きスタイルで営業しているすべての旅館が受け入れなければいけないというわけではないし、そんなことにはならないであろう。
ただ、1泊朝食や素泊まりを漫然と出しているのであれば、もったいない話なので、地域経済が活性化するように、あるいはお客さまニーズに応えられるように進化させた方がすべてにプラスに働くのではないであろうか。
(アビリティコンサルタント・プライムコンセプト取締役 内藤英賢)