緒方氏
全国各地に「行きつけの場所」を
「マスク外す？」。5月下旬、同僚とコロナ禍以来初の出張でロンドンの空港に降り立った私たちは、周囲で誰もマスクをしていないのに気づき恐る恐るマスクを外してみました。気分が良いもののどうも落ち着きません。街中ではマスク姿を見かけませんでしたが、子供を持つ取引先旅行会社の担当は、クラスで陽性が出ると学級閉鎖になってしまうため乗り物やお店では必ずマスクをしている、と言われ世界中皆同じ思いなのだと実感したものです。
5月24日、成田空港で観光庁による訪日観光実証事業で来日する団体の到着を多くの取材陣と出迎えました。いよいよ待ちに待った開国です。これでようやく観光目的の来日が可能になるのだと思うと、泣けてくるような気持ちでした。
社内異動でインバウンド担当になり四半世紀近くがたちましたが、思えばいろいろなことがありました。9・11、日韓ワールドカップ、リーマンショック、東日本大震災、ラグビーワールドカップ、オリパラなど浮き沈みの激しい市場変化も経験しました。台風や大雪のたびに対応に追われますが、以前より気候変動が強烈になったのも実感します。大雪で運休になった列車内で一夜を過ごした英国人の方々にはむしろ楽しかったと言われたり、どんな時にもポジティブなお客さまや海外旅行会社の方々に救われ、助けられてきました。これまで世界各地へ営業に訪れ数多くの海外旅行会社と仕事をし、長いお付き合いの方々とはこれらの浮き沈みを一緒に体験し、友人というよりむしろ戦友といった関係です。
「日本行きを申し込んでいた方は、別の国を紹介してもひたすら日本の開国を待っている」と取引先から言われた通り、開国と共にたくさんのお客さまが来日しています。2年半ぶりに再来日できた方々が、行きつけのホテルや食事店で懐かしく歓談しているところもたくさん見ました。あれを食べてこれを買ってと、目的はたくさんあるでしょうが、皆求めているのは地域での温かい人とのふれあいだと思います。私たちは全国各地に「行きつけの場所」を作ってあげたいと思っています。「また来たよ！」と言えるような宿や食事店など、行きつけ感があるほどまたその土地を訪れたくなるはずです。
ハワイの旅行会社にご紹介して楽しんでいただいた地吹雪ツアーのように、地域にはそこにしかないイチオシがあります。地元や自治体の皆さまと一緒にイチオシをたくさん紹介して、訪日客に「行きつけ」を作ってあげたいと思っています。
緒方氏
