
一般社団法人雲仙観光局(長崎県雲仙市)統括事業部長 瀬戸正志氏
インタープリテーション全体計画
昨今、着地型コンテンツの造成を目的とした事業が展開されていますが、思いつきや他地域の成功事例に捉われ、地域の価値を可視化せず共有をしないまま造成をしていないでしょうか。雲仙観光局は、そのような状況に疑問を抱きながら、地域が提供できる価値を明らかにし、事業者が地域の強みを理解・共有・活用するため、「インタープリテーション全体計画」(以下、IP全体計画)を環境省などの協力で策定しました。それらにのっとった人材育成とともに、仕事の現場で実践しながら、具体的にIP全体計画を踏まえた地域の価値を体現しストーリーが感じられるコンテンツの造成を行ってきました。
その成果として、JR九州クルーズトレイン本部の方々と弊局スタッフが共に造成・運営している、「ななつ星」専用コンテンツでは、雲仙地獄での“地熱体験ココタッチ”(地熱を全身で体感しながら星空を眺めるプログラム)や、”白雲の池でのネイチャーウォーキング”(雲仙温泉の明治~昭和初期の外国人が避暑に訪れていた時代の楽しみ方を現代風にアレンジした体験ツアー)などが実施され、好評を博しています。「普賢岳災害や旧態依然とした温泉地のイメージが変わった」との感想をいただいたり、感動から涙を流されるお客さまもいらっしゃったりと、着実に雲仙温泉の価値や温かさが伝わる良い方向へと変化が起きています。
クルーズトレイン本部の全社員にはIP全体計画が配布され、ツアーデスクや列車内での案内に活用されています。IP全体計画のように地域で整理された価値やストーリーがあることで、自信を持ってお客さまに伝えることができると、うれしい声をいただいています。また、雲仙温泉街のある宿泊施設では、スタッフ全員がIP全体計画を持ち、新たなコンテンツ造成や案内に役立てています。
さまざまな関係者が、同じ方向性を見ながらも、それぞれの強みを生かし、地域全体として、ある価値についての多面的な魅力を伝える。これはあたかも、IP全体計画が「楽譜」であり、それぞれの事業者が特色ある「楽器」となり、地域全体でオーケストラを奏で、お客さまに感動をお届けするようなイメージです。これを「(雲仙)オーケストラモデル」と名付けています。
今後も、IP全体計画のブラッシュアップを行いつつ、地域の価値を体現しストーリーが感じられるコンテンツやサービスの充実をはじめ、自然文化資源や地域らしさの保全・継承などを意識した事業経営にシフトしていけるようなインナーブランディングを進め、地域ならではの価値とストーリーに恥じない、サステナブルな地域づくりを進めたいと考えています。
一般社団法人雲仙観光局(長崎県雲仙市)統括事業部長 瀬戸正志氏