【VOICE】長門湯本温泉の観光まちづくり 長門湯本温泉まち株式会社 エリアマネージャー 木村隼斗 氏


木村氏

官民「総力戦」で高める地域価値

長門湯本温泉は、約600年の歴史を有する温泉地、住吉大明神が授けた名湯「恩湯」と清流・音信川のせせらぎが織りなす湯浴みの時間が至高の価値を演出する。温泉街の魅力は、地域に根差した個性ある店舗を楽しむそぞろ歩き。四季の移ろいを感じ、萩焼文化、食、川床での憩いの時間を楽しみながら、夕暮れにはこの地で醸造されたクラフトビールやオリジナルカクテルと情緒あふれる夜景を堪能する。いつもの時間の流れを少し変え、川と湯が生み出す生活文化に身を置くことができる特別な場所である。

こうした空間は、2016年から地域、民間、行政が一丸で取り組む観光まちづくりが結実したものだ。活力を失いつつあった温泉街で、地域資源を最大限引き出すためのランドスケープとそぞろ歩きの楽しみ、全国トップ10という明確な目標を提示するビジョンを官民で共有、以降約4年間をかけて温泉街全体のリノベーションを重ねてきた。「恩湯」の地元民間再建、地域共有財となる公共空間の再編、星野リゾート界長門の開業、20年間なかった新規店舗開業が10軒、季節魅力の創出など、今なお継続して具現化されている。

まだまだ成功事例とは言い切れないが、「公民連携」による現在進行形の面的再生事例として、地方創生の一助になることを願っている。こうした観点からあえて、「公民連携」の旗印の下で進められるさまざまな地域での事業について感じる危機感を共有したい。

人口減少、急激な人口構造の変化を目の前に、行政だけでなく、民間だけでもなく、両者が連携し地方創生を実現することは重要であるが、「連携」という曖昧な言葉が、相互依存を生むケースが少なくないのではないか。民間サイドは公民連携事業の体裁を形式上取り行政支援を引き出そうとする、行政サイドは「民が頑張るのが本質」と自らのリスクを避ける、そんなケースが多くの地域で公民連携の在り方をゆがめている懸念はないか。

官と民とは「公共」を実現するパートナーである。両者がビジョンの共有をし、「連携」は大前提として、それぞれが将来に向けた役割を果たす「総力戦」の姿勢でなければ、地域の価値を向上、持続させることはできない。民間は事業、行政はインフラとルールこそが、将来に残せる財産。目指す「公」のビジョンを地域と共創し、それぞれが総力を挙げて果たす、各地で本気で取り組む多くの方々、長門湯本温泉で協働する多くの関係者の姿とともに、「官民総力戦」の言葉を浮かべている。

木村氏

 

 
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