
近畿運輸局観光部長 藤原幸嗣氏
面的な魅力訴求が重要
近畿運輸局観光部として観光施策の目的は、観光を通じた関西の地域活性化と考えています。
観光の現状は、コロナ禍後の回復から成長軌道に移りました。ここ関西でも活況を呈する一方、急激な環境変化が起こり、一部地域や時期によっては地域住民の生活への影響が顕在化し、観光客の満足度の低下も懸念されています。地方部への誘客、関西各地への周遊促進、課題解決に向けて各所での取り組みに対する支援を行うとともに、自らも取り組みを進めている中で、各地域の面的な魅力訴求の重要性への思いを強めています。
関西は文化、歴史、自然、食、世界的に人気の高いテーマパークなど、魅力ある観光資源が豊富に存在し、それぞれに個別の強みがありますが、観光客の来訪意欲を向上させるには、エリア全体のベクトルを合わせて、資源を共有し、補完し合い、魅力を高めながら面的に発信していくことが大切です。加えて、今後は感性が触発されるような体験など、何らかの価値が見いだせる特別感がますます求められていくと考えており、例えば地方における生業や日常生活そのものは、観光客に訴求する地域の魅力となる可能性を秘めています。まだ知られていない、気付けていない魅力を発掘することは、地域への誇りや地域の良さを再認識するチャンスでもあります。
魅力を創り出すのも人、観るのも人、感じるのも人です。
行政や観光関係者のみならず住民も観光の意義を理解し、観光客とともにその魅力を共有できる空間(地域)は、観光客と住民の双方にとって心地よさを感じさせるものとなります。観光するにも生活するにも心地よく魅力がある地域は、人が活発に活動するため自ずと消費と生産が生まれます。地域が循環し、観光で稼げる、生活できる地域との認識が定着すれば、さらに人は集まり、にぎわいのある持続可能な観光地域が形成されるのではないでしょうか。
魅力ある空間が関西全域にあまねく存在すれば、周遊が促進されるとともに、魅力的な広域的コンテンツとして関西全体の発信力がさらに高まると考えています。観光が地域の活性化、持続可能な発展を促進するための有効な手段であることを地域全体の共通認識にしていくことが重要です。
これからも地域と連携し、求められること、期待されていることに応じて支援や取り組みに一層注力し、4月から開催される大阪・関西万博の開催後も見据え、関西の強みである交通の利便性を発信、発揮し、観光を通じて関西の地域活性化の一助となるよう観光施策、各種取り組みを加速していきます。