
小高氏
新たな言葉を理解し、正しい着地を
名鉄観光サービスの地方創生プロジェクトの設立から丸3年が経過した。コロナ禍が始まる1年前のスタートであり「今のスタイルでは観光業界での今後の選択肢や展開の範囲が限られる」という判断の下、地方創生という各省庁や地方自治体の行政委託事業の獲得業務が始まった。全国支店の営業担当に何度もオンラインでの勉強会、行政の委託事業獲得のセミナーなどを開催した結果、受託事業の獲得数も大台を超える規模の採択数となり、その中で受託事業の内容も精度が高く専門的なスキルが必要ということから今年7月には地方創生専門の部が設立となった。観光業界にとどまらず、全国で地方創生に企業が続々と参加する中、多くの条件や充実した内容が求められるようになってきた。行政側からも度々重点的に登場するDMO、DX、観光プラットフォーム、サステイナブル事業化、稼ぐ力…どれも大切な文言であることも、今後の観光に絶対必要なフォルムであることも関係すればするほど、言葉の意味の重要性が理解できる。
しかし、現実はどうか。参加する事業者は地域の現状を理解しているのだろうか? (1)実務となるとプレーヤーが断片的な知識しかない(2)思いを持って観光商品を造成してもマーケットへの流通に対しての無戦略(3)仮に流通してもDMOはプラットフォーム機能や受注・精算などの業務に対応できない(4)DXを導入!といっても便利なアプリを導入する程度の事業―と、このように“地域観光の今後や将来の発展に”という観光商品造成から販売、稼ぐ力を持って継続するという展開型には程遠い状況と実感している。各省庁から事業を受注してから半年余りで終了する案件の完成度は低く、難なく完了することが業務の本質となり、地域に根付いて自転できる事業やしくみに成長することや継続続行という事業は不可能に近い。かと言って民間力のみで継続するまでの資金力はない。結局、毎回リセットされゼロイチの繰り返しになっているのが現状である。
この状態に適応なのが、単年度勝負のイベント・催事・祭り等の充実や新メニューの磨き上げが重要な事業とされ、催事の持続が観光の持続であり、将来であるとする行政が多くなるのも分かる。事業を企画立案する省庁担当者も毎年異なり、それを受注する業者や担当者も新規に増える。変わらないのは情報の少ない中での毎年変わる目標や新しい文言が届く地方自治体や観光関係者。コロナ禍からもがき逃げ出せる方向が見えてきた今、本当に今の位置で正解なのだろうか。