今後の旅行マーケットの予測と課題
今年のゴールデンウイークにハワイで過ごす日本人旅行者の姿が情報番組で流れたことは記憶に新しい。政府は6月に水際対策を緩和し、1日当たりの入国者数制限を2万人まで拡大。約2年ぶりに一定の制限のもと外国人観光客の受け入れも再開した。これらの事象が示すように、旅行の本格的な再開が近づいている。本稿では仮説も含めた今後の旅行マーケットの予測と課題を取り上げたい。
国内旅行市場については、昨年秋以降高まっていた先送り需要が景気の先行き不安感を背景にやや鈍化している。その中で全国を対象とした観光需要喚起策の実施は一定の効果が期待できる。一方で前回のGo Toトラベル事業を教訓に、発表時期や期間、対象都道府県など、旅行者はもちろん、宿泊施設、旅行会社などが混乱をきたさないような対応や配慮が必要である。
課題となるのは日本人の有給休暇の取得率だ。60%と欧米諸国(ドイツ93%、フランス83%、アメリカ80%)と比較して依然低い状況にある。「ワーケーション」のような働き方の変化に伴う新たな旅のスタイルが注目される中、旅行の本格的回復を見据えて、需要の分散化、人手不足の解消、生産性向上なども念頭に、休暇取得が進むよう政府、企業が一体となって「仕組み作り」「休み方改革」を進める必要がある。
海外旅行市場については、先送りされた需要がこれから顕在化すると予測される。サーチャージ、出入国のPCR費用、円安による滞在費高騰、ロシア上空の飛行制限などマイナス要素もあるが、まずは海外旅行コア層が価格を抑える工夫をしながら旅行を再開すると思われ、この層には景気の影響も比較的小さいだろう。特にハワイなど人気のある方面では需要も上昇していくと予想される。今後海外旅行の需要を増やすには、海外旅行を身近なものに戻すための社会的受容性の確立、機運醸成の露出、プロモーションが必要だ。
訪日インバウンド市場については、為替相場が追い風となる。日本は周辺国と比べると、欧米豪などからのロングホール市場の需要回復が先行すると考えられる一方、東南アジアなど新興国市場の需要回復に鈍さがある。2019年レベルの訪日外国人客数の回復については、中国、韓国など比率の高い国からの回復状況次第。また、ホテル・旅館の稼働率の回復に伴い人手不足が表面化すると思われる。ADR(客室平均単価)と給与水準の引き上げが課題となるだろう。
当社としてもツーリズム復活に寄与すべく、今後も情報発信を行っていきたい。