人材(人財)問題への取り組み
昨今ではどの業界も人材不足を嘆いています。募集しても集まらず、入社しても長続きせずに離職率も下がらないと。しかし、嘆くだけで手をこまねいていては何の解決にもなりません。業界全体でこの人材(人財)問題に真摯(しんし)に取り組むことが急務であると考えます。
離職の主な原因の一つに、待遇・給与面があります。日本ではサービス業の賃金はまだまだ低く、海外のようなチップ制度もありません。サービス料も15%前後へと上昇していますが、それが従業員に正しく還元されていないことも多いかと。最近はいくつかのホテル・旅館が最低賃金の底上げや、新入社員の給与・年収のアップを行い、明るいニュースとして話題に上りましたが、一部ではなく業界全体でのさらなる待遇改善が必要です。
そのためには売上・利益のアップが必要不可欠ですが、その手段として稼働率の上昇を目指すことを重視する傾向が、宿泊・料飲ともに多く見受けられます。確かに利用人数を増やすことは売上に直結しますが、スタッフの疲弊にもつながります。今求めるべきは、稼働率ではなく単価を上げることです。そのためにはハード・ソフト・ヒューマンのサービス内容を見直し、質を充実させて利用客の満足度アップとリピーターの確保につなげなければなりません。ハードについてはすでに開業している施設では、大がかりな変更や改装を行うことは簡単ではないため、ソフトとヒューマンに力を注ぐのが良いかと。ソフトについてのキーワードは”体験”です。ホテルのみならず周辺地域も含めて、その土地ならではの差別化が図れる内容を提供できるかがカギになります。四季を生かしたツアーや地元の人々や芸能と触れ合えるイベント、そこでしか味わうことのできない旬の食材や地酒など、お客さまに感激そして感動してもらえる体験を企画してみましょう。またヒューマンに関しての一番のポイントは”人間関係”の構築です。働きやすい職場環境が現実のものとなるように、コミュニケーションを取り合うことの大切さ、将来への展望が描けるキャリアアップのサポート、そして外部の研修も含めたスキルアップの促進などにより、モチベーションをあげて楽しく働ける環境を整えましょう。
12月には改正旅館業法も施行されます。私も厚労省の検討会メンバーとしてカスタマーハラスメントを含む過度な要求に対する応対の研修ツール作成に取り組んでいる最中です。これにより従業員の疲弊を減らすことも、離職を防ぐための一助になればと存じます。