【VOICE】インバウンド  京都駅ビル開発 顧問 脇坂明弘 氏

  • 2022年11月8日

脇坂氏

バランスの取れたサステナブルな観光を―京都から

 水際対策の大幅な緩和と全国旅行支援のスタート等により京都も一気に活気が戻りつつある。

 来訪者数の回復が先決であることは言うまでもないが、単純にコロナ禍前の水準に戻ればいい訳ではない。

 コロナ禍前の2019年の京都府へのインバウンド訪問者数および宿泊者数は全国第4位であるが、平均宿泊者数は第37位、1人1回当たりの旅行消費額も、第29位であった。外国人にとって、京都は日本で1、2の人気を誇る旅行先だが、人数の割には、消費額が伸びない構造となっている。

 消費額が低いのは、宿泊日数・単価が低く、公共交通を利用し、拝観料が無料もしくは低い寺社仏閣を回り、夜の消費をしない旅行者が多いからと言える。

 外国人観光客の人気最上位にランクされる伏見稲荷大社へは、京都駅からJR利用で290円、境内の参拝は無料で、QRコードをスマホにかざすと多言語で観光案内をしてくれる。神社で拝観料を取るのは難しいだろうが、外国人向けの何か特別な体験を設定して料金を収受することはできないか? 寺院では、早朝や夜間のコト消費を促すコンテンツの充実により、特別拝観料が収受でき、宿泊の促進にもつながるのではないか。

 また、高価な対価を払ってでも質の高い文化・歴史・伝統工芸をじっくり味わいたいという上質な観光客に対し、一般の観光客と差異化したコンテンツを提供したい。

 もう一つは、オーバーツーリズム・観光公害というインバウンドが加害者、住民が被害者という対立構造からの脱却である。「いちげんさん」のインバウンド客が急増し、有名観光地に集中してしまい、騒音やごみのポイ捨て、市バスの混雑で高齢者が座れないといった観光公害が発生した。外国人との文化のギャップを埋められず、マナー違反も先手を打てていなかった。

 そこで、一昨年、京都市などは、観光客、観光事業者、市民の行動基準「京都観光モラル」を打ち出し、観光客には写真撮影禁止の注意書きを示したり、神仏への敬意を持って静かに拝観することなどを求めるとともに、宿泊施設や飲食店などを通じて、市民生活と調和した行動の実践を観光客に呼び掛け、観光客が京都の人々や地域と積極的に触れ合う機会を持つ等、社会全体で考えないと課題は解決しないという意識に変えようとしている。

 このような地道な取り組みにより、千年を超えて蓄積された文化の保有と伝承という誇りに裏打ちされた京都ブランドの価値向上を図り、量と質のバランスの取れたサステナブルなインバウンド観光の実現を京都から目指したい。

 
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