【VOICE】ふるさと納税 東洋大学大学院国際観光学専攻博士後期課程(温泉研究家) 高橋祐次 氏


高橋氏

制度への期待と不安

 定年退職後、社会人学生として観光学を学んでいる。観光とは縁のない業種に勤めていたが、40歳で温泉を観光資源とする地域の事業所に赴任したのが、「温泉」と関わるきっかけとなった。

 温泉入浴を愛してやまないが、研究テーマとして、「入湯税」「宿泊税」を中心とした地域の観光振興財源を調査・研究している。最近では、地方活性化の切り札である「ふるさと納税制度」についても、研究テーマに加えている。

 入湯税は、温泉地を抱える自治体が対象であり、宿泊税は、大きな観光地や都市部でなければ機能しない部分がある。ここ数年、「入湯税の超過税率の施行(値上げ)」や「宿泊税の新設」が見られるが、これらは現地での消費に対しての税収であるので、昨今のコロナ感染拡大の影響で移動に制限がかかり、大幅に落ち込んでいるのが現状である。

 その中で、注目を集めているのが「ふるさと納税制度」である。「税金」と「寄付金」の違いもあるものの、すべての自治体が同じ土俵で争うことができる制度であり、地方自治体間で切磋琢磨することで財源確保が可能になる。自治体のシティプロモーションに有効な手段であり、その地域への誘客効果も期待できる。

 しかし、半面、自治体の特産品の需要は拡大するのは事実ではあるが、返礼品という位置づけがあることを忘れてはいけないと思う。地場産品が、果たして価格通りの価値があると納税者が感じているかどうか。恒久的な制度とは言えない中、設備に多額の投資をしている自治体もある。独り立ちができるかどうかの見極めが大事になってくる。

 「ふるさと納税制度」は、今まで、地場産品以外の過度の返礼品に対して問題があった。その点、「ふるさと納税指定制度」導入後は改善されてきている。ただし、税金の控除が期待される富裕層にメリットがあり、本来の寄付文化を衰退させる危険性をはらむ制度でもあると指摘する研究者もいる。

 地方と都市部の格差が問題視されている中、いろいろな施策が行われてきた。根本的な解決には至っていない中、「ふるさと納税制度」は基本的には、都市部の財源の移動が行われている。しかし現状、地方から地方への税収(寄付金)の移動も見受けられ、結局ゼロサムゲームになっている部分もある。地方の活気に期待ができる制度であるだけに絶えず修正が必要になってくる。

高橋氏

 
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