旅行会社のSDGs推進を後押し
コロナ禍で日常が簡単に崩れるのを目の当たりにして、サステナビリティ(持続可能性)や持続可能な世界を実現するためのSDGs(国連の持続可能な開発目標)に対する人々の関心はますます高まっています。観光でも同様で、一度限りの物見遊山ではなく、その土地に溶け込んで、また帰ってきたくなるような旅行を望む人が多くなっているように思います。
残念ながら、日本の旅行業界のSDGsへの関心は高くありません。2021年発表の立教大学とJTB総研の調査では、SDGsに取り組んでいる企業の割合は、業種別で旅行業が最低というあまりありがたくない結果が出ています。
そこで、日本旅行業協会(JATA)では、ポストコロナの旅行市場を迎えるにあたり、社会貢献委員会が中心となって「SDGsアワード」を創設しました。旅行会社のSDGsの取り組みを後押しする一方、SDGsへの認識を業界全体に広めるのが狙いです。
JATA会員の多数を占める中小の旅行会社には、SDGsに関心がないか、関心があってもどう取り組んでいいか分からないという会員が少なくありません。アワードでSDGsになじんでもらい、できれば応募も促したいと考えました。
このため、応募分野は「社会・人権」「経済・産業」「地球環境」「共創」と幅広く設定し、旅行商品だけでなく、職場での取り組みなども対象としました。
応募があったのは、26社から75件。JATAの会員数1113社からすると少ないかもしれませんが、中小の会員社からの応募もありました。内容も、最先端の知見を生かした旅行商品から社内の禁煙運動までバラエティに富んでいて、有識者や観光庁の方々も迎えて行った5月の審査委員会では、応募作の優劣を付けるのに困るほどでした。
審査の結果、初のSDGsアワード大賞は、エイチ・アイ・エスの旅行商品に決定しました。現地NPOの協力のもとに、カンボジアの小学校建設や授業を手伝うというツアーの造成・販売です。真正面から途上国の貧困問題に向き合った姿勢が評価されました。
このほか各部門の優秀賞には、JTBコミュニケーションデザイン、クラブツーリズム、楽天グループが選ばれました。沖縄ツーリストが特別賞を獲得するなど、いわゆる大手以外の応募社からも数件の受賞がありました。受賞した取り組みはいずれもユニークかつ興味深いものばかりです。ぜひJATAのサイトで内容をご覧になって下さい。
SDGsの達成期限まであと7年。JATAのアワードが回を重ねるごとに応募数を増やし、旅行業界のSDGsのけん引役になっていくことを願っています。