【4メディア共同企画・地方創生が生み出す未来】リポート「宮城県栗原市」 


市内に整備されたウォーキングコース「栗原山麓ジオトレイル」

宿泊増へ「トレイル」を整備

 栗原市の観光名所でまず挙がるのが栗駒山と伊豆沼・内沼だ。

 栗駒山は栗駒国定公園の主峰で標高1626メートル。初心者から上級者まで経験に応じて楽しめる9本の登山コースがあり、四季折々に楽しめるが、特におすすめなのが秋の紅葉の時期(9月下旬~10月中旬)。一望する景色は、日本一の山岳紅葉「神のじゅうたん」と称されるほど。

 伊豆沼・内沼は1985年に登録された国内2番目のラムサール条約登録湿地。日本一のマガンの飛来地で、その飛び立つ音は環境省の「残したい”日本の音風景100選”」に選ばれている。数万羽のマガンが朝、日の出とともに一斉に餌場を目指す「飛び立ち」や、日没と同時に沼に戻る「ねぐら入り」の風景が圧巻だ。

 2008年に岩手・宮城内陸地震、11年に東日本大震災と、立て続けに大きな地震に見舞われた同市一帯は「栗駒山麓ジオパーク」として日本ジオパークにも認定されている。山麓の大規模な地滑り跡はダイナミックな地球の鼓動を感じさせるとともに、人々の自然災害への向き合い方を考えさせられる。

 10町村が合併してできた同市だけに、伝統の祭事も多い。300年の歴史を誇る「くりこま山車まつり」は華やかな山車と踊りのパレードがにぎやかに繰り広げられる。コロナ禍で昨年、一昨年と中止になったが、この夏(7月30、31日)、3年ぶりに復活した。

 年間観光客数は岩手・宮城内陸地震の前年(07年)に191万人。翌年、地震で87万人に落ち込み、10年に113万人まで回復したが、震災で11年、過去最低の77万人まで再び落ち込んだ。

 市は入り込みを07年の水準に戻すとともに、大台の200万人を目指そうと大規模なプロモーション等を展開。16年に目標の200万人に到達した。しかし、コロナ禍で20年136万人、昨年も131万人と三たび落ち込みを見せている。現在は前回の目標をさらに上回る220万人にチャレンジしている。

 同市が観光客数以上に重きを置くのが宿泊客数だ。県全体の観光客数に対する宿泊客数の割合が約14%。これに対して同市は4~5%と極端に少ない。地震前に到達していた9~10%を現在、目指している。

 施策の一つが市内での長期滞在につながる「栗駒山麓ジオトレイル」の整備。市内の林道、農道などを活用したウォーキングコースで、ガイドや宿泊施設の館主の案内で観光客に巡ってもらう。

 「力を入れたいのが人の育成。お客さまに個性的、魅力的な人と触れ合ってもらい、その人のファン、さらには栗原市全体のファンになっていただく。交流人口、関係人口の拡大にきっとつながるはずだ」(栗原市商工観光部田園観光課課長補佐・菅原直人さん)。

 市では今年度から26年度までの新たな5カ年の観光振興ビジョンを始動させた。テーマは「次代につなぐ良好な地域環境づくり」。「コ・クリエーション(共創)」をキーワードに、「行政と民間が対等の立場で、同じ夢を持って今できることを進めている」という。

 「楽しい人、魅力的な景色、おいしい食べ物がたくさんある栗原市。ぜひ、お越しいただき、これらの魅力を堪能いただきたい」(菅原さん)。

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