【2021新春インタビュー】久保田 穣・日本観光振興協会 理事長に聞く

  • 2021年1月1日

日本観光振興協会理事長  久保田 穣氏

危機管理能力の向上支援 観光インフラの整備を

 ――2020年を振り返り、印象に残っていることは。

 「当協会は日本観光協会とツーリズム産業団体連合会が合体してできた組織だが、20年4月に10期目を迎えた。これを機に、新たな理念、役割、行動指針を策定、日本の観光にとって真に役立つ組織として飛躍しようとしたが、その矢先に新型コロナウイルス禍に見舞われた。コロナに始まり、コロナで終わった1年だった。ステイホームの呼び掛けなどは観光と全く相反する動きであり、残念な年だったといわざるを得ない。一方で、新しい時代に向け、力を蓄える側面もあった」

 ――例えば。

 「遠隔地を結びながら、さまざまなイベントがオンラインで開催されるなど、1年前には想像しなかったことが現実になり、どう対応していくかが問われた。また、インバウンドは右肩上がりで増えてきたが、国内観光の弱点がそれによって覆い隠されていた。コロナ禍で平日にインバウンドが来なくなったことで改めて明らかになった。旅行平準化などの課題がそれに当たる」

 ――20年はどんな事業展開を。

 「コロナ禍の対応は業界だけでは限界があり、政策的なサポートを受けなければならない。そのため、当協会だけでなく、業界を束ねて、業界全体の総意としてさまざまな要望を行ってきた。その成果として結実した一つが『Go Toトラベルキャンペーン』であり、雇用調整助成金の手続き簡略化だ」

 「もう一つは安全安心に向けた取り組み。いくら安くても安全性に問題があっては観光客は来てくれない。受け入れ側の安全に対する取り組みの実例のホームページを作成し広く公表した。また、観光客側のエチケットの問題については『新しい旅のエチケット』の動画などを作成し、鉄道や飛行機の中、旅行会社などで放映していただいた」

 ――コロナ禍の中、秋には沖縄で「ツーリズムEXPOジャパン」が開催された。

 「2万人を超える来場があったが、コロナ感染は全くなかった。出展者、来場者相互の配慮によるものだと思う。そういう意味で、MICEの良いモデルケースの一つだといえるのではないか。1月には東京で商談会が開催されるが、この経験を生かしていく」

 ――Go Toトラベルは落ち込んだ観光需要を喚起したと思うが、批判も多い。

 「事業者に直接支援すればいいという意見もあるが、非効率だ。需要を作るのが一番の経済対策ではないか。観光産業はすそ野が広く、観光が活発になれば、その効果は地域経済、そして他産業に波及する。税の投入としては一番効率的・効果的だ。首相がそれを一番理解されている」

 ――延長論もある。

 「支援策はいずれは打ち切られるが、いきなりGo Toがなくなってしまうと厳しく、反動も大きい。観光を入り口にした経済振興策を続けていただき、需要が落ち着くゴールデンウイーク後まで継続させ、ソフトランディングするのが望ましい」

 「Go Toについては分かりにくいという指摘もあるが、税金を投入しているのだから、チェック体制が厳しいのはやむを得ないだろう。一方で、体調の良くない人が団体ツアーに参加したり、バスの中で食事やカラオケをさせることで感染者が出るという問題も現実に起きている。関係者はチェックをきちんと行うなど、気を引き締め対応しなくてはならない」

 ――21年はどんな年になるだろうか。

 「密を避けるため旅館・ホテルは100%の稼働ができず、感染対策にかかるコストも上がっている。経営体力の強化が課題だ。また、旅行需要の平準化も必要。こうした問題を解決するため、国内観光の構造改革を進める年になることを期待する」

 「インバウンドについては相手国の状況もある。ワクチンが開発、投与され、受け入れ環境が整備されたとしても以前のような数字にはすぐには戻らないだろう。東京五輪・パラリンピックが段階的再起動の一つの契機になるのではないか」

 ――事業の中で、特に推進すべきものは。

 「一つは危機管理能力の向上。事業継続計画(BCP)を作っている企業は観光分野では非常に少ない。日本商工会議所と連携し、20年6月に設けた『観光危機管理・事業継続力強化研究会』での議論を通じ、業界の危機管理能力を向上させていく」

 「コロナ禍でワーケーションが注目されているが、一部の人を除いて、企業人は企業のバックアップがないとなかなかできない。当協会では経団連やワーケーション自治体協議会と覚書を結び、20年度から企業側の実例を作る取り組みを始めたところだ。経団連企業の人事・総務担当者を対象に6カ所でモニターツアーを計画している。シンポジウムなども行い、企業側の課題にも取り組む状況を作っていく」

 ――ウィズコロナ時代、観光業はどうあるべきか。

 「不要不急の外出(旅行)は避ける、との声があるが、不急はともかく、観光は決して不要ではない。観光は人間の根源的欲求に基づく行為であり、知的好奇心を満足させ、心を癒やし、心身を開放させることは明日への活力になる。観光は人間にとって極めて大事な行為だ」

 「コロナになって改めて感じるが、地域の観光推進体制の充実が必要だ。基礎的な観光インフラへの投資はこれまで十分に行われてこなかった。地域交通も含めて、基本的なインフラが弱いと新しい投資を呼び込めない。優秀な旅館・ホテルが1軒あっても、地域全体の魅力が乏しいと沈んでしまう」

 「観光庁をはじめ、国の機関はさまざまな支援、助成制度を設けているが、それらを有効に活用すべきだ。そのためには情報収集が必要であり、当協会もそのお手伝いをしていく」

【聞き手・内井高弘】

日本観光振興協会理事長  久保田 穣氏

 
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