【駅メロ とわずがたり 2】ドクターイエロー”乗車”体験 藤澤志穂子

  • 2022年10月20日

ドクターイエロー(2014年7月、JR東海浜松車両基地)

 「あの『ドクターイエロー』に乗ったことがある」と話すと多くの人に驚かれる。「見ると幸せになれる」という、東海道新幹線と山陽新幹線の保線車両で、2014年7月末のJR東海・浜松車両基地での一般向け見学会でのことだった。当時の私は産経新聞経済部の国土交通省担当で記者クラブ詰めのキャップ。ちょうど新幹線の運行開始から「50周年」という節目の年で、その連載企画取材の一環として、特別に内部を見学させてもらった。

 「ドクターイエロー」は、走行しながら、レールのゆがみやねじれなど軌道関係と、架線や信号など電気関係の点検を行う。黄色なのは夜でも目立つようにするため。内部は多くの測定機器が配備され、関係者用の座席に走行中の監視台や車外モニターなどがあった。内部は意外に味気ないものだと、拍子抜けしたことを覚えている。だがこの内部見学は、一般向けでは2日間で400組の限定で、全国から4万5千通の応募があった。競争率110倍以上。岐阜県から来た親子連れに感想を聞いたところ、「一生の思い出になりました」と感無量の表情だった。炎天下の真夏日で多くのファンが駆け付け、うれしそうに一緒に記念写真を撮っていた。抽選に外れ、「何とか中に入れてもらえませんか」と直談判していたファンも多く(残念ながら断られていた)、記者として難なく中に入れてもらったことに後ろめたさも感じたものだった。

 「見ると幸せになれる」という伝説のきっかけははっきりしない。あるいは映画「幸せの黄色いハンカチ」(1977)のイメージから来ているのかもしれない。昨年12月には2021年で運行開始「20周年」となることを記念した腕時計がセイコーから限定5千点で発売された。税込み5万円以上と決して安くはないが好評で、すでに最終受け付けの段階に入っている。

 JR東日本には、東北新幹線などを走る「East―i(イーストアイ)」という保線車両があるが、こちらは「マニア垂ぜん」であるとは聞かない。白地に赤の車体で、その他の一般車両の中に埋もれてしまい判別しにくそうだ。一方「ドクターイエロー」は見分けやすく、「いつどこに出没するか分からない」というミステリー性もあって、縁起物として大人も子供も魅了する存在になったのだろう。

 ともあれ貴重な体験だったが、「その後の人生、そんなに幸せになったかな」という気がしないでもない。だが「ご利益」で、気付かないうちに当初の想定より良い人生になっているのかもしれない。

 ※元新聞記者、昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。「乗り鉄」から鉄道研究家への道を目指している。著書に「釣りキチ三平の夢 矢口高雄外伝」(世界文化社)など。


ドクターイエロー(2014年7月、JR東海浜松車両基地)

 
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