【食と観光 訪日客4000万人時代の和食 14】お客様の立場で目先の商売には走らない 今井徹

  • 2018年3月6日

 今日も大阪・道頓堀の街は海外からのお客さまであふれている。いろいろなお店の前には中国語や韓国語、そして英語の看板が乱立している。中には外国人の店員が母国語で客引きをしている店もある。

 商店会の集まりでも毎回のように「インバウンド対策」が議題に挙がる。専門家のアドバイスがあったりもする。そのほとんどが外国人観光客に対する利便性の提供だ。メニューなどの多言語表示、宗教的な食材の問題、商店街内での外国語による音声案内…。これってどうなんだろう。

 もし私がパリに行ってコンコルド広場のカフェに日本語の看板がでかでかと貼られて、前では流暢な日本語の客引きが立っていて、料理を頼めば箸が付いてくる、みたいな。こんなの親切でも何でもない。どちらかと言えば嫌だ。

 私が店で良く話すのが「お客さまの立場で」ということ。来日される方々は日本を味わい、日本を感じ、日本の常識に驚くことを楽しみにされているのではないか。私どもの店ではメニューこそ多言語で用意しているが、それ以外は日本人の常連さんに提供するのと同じ味とサービスだ。

 街がどんどん観光地化してくると一見さんの割合が増えてくる。一見さんと常連さんでは残念ながら店の対応に差が出てしまいがち。初めて行くお店で素晴らしい接遇を受けると「ぜひまた来よう」と思う。そのように感じていただけるお客さまを一人ずつコツコツと増やしていくことこそが商だと思う。

 海外からのお客さまでも同じ。同じ方が再びご来店になるのは何年先か分からなくても、今の時代SNSなるもので情報が拡散されるし、国へ帰って友人に伝えていただけるかもしれない。一見さんだからと言って目先の商売に走ることなく一人一人のお客さまにどうすれば少しでもより喜んでもらえるのかを真剣に考えながら日々精進したいものだ。

 現在のインバウンドブームは2020年の東京五輪・パラリンピックがピークのようにも言われているが、決してそんなことはないと思う。

 黄金の国・ジパングが本当の意味で観光先進国になるためには、外国人観光客に迎合するのではなく、何気なくそっと日本の味をおすそ分けするくらいがいいのではないか。そのためにはこれからも日本の味を日本人のためにしっかり守っていかなければならない。変なグローバルスタンドはほどほどに…。

(国際観光日本レストラン協会理事 道頓堀今井、今井徹)

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