【食と観光 日本の新たな魅力64】塩のマグネット力の強みを 山上徹


 人間が生きていくために塩分は不可欠だ。古代ローマ時代、貴重なソルト(塩)は兵士や役人のサラリー(給料)となっていた。和製英語で給与(塩)をもらう人がサラリーマンだ。

 また、日本の神道で塩は、神聖なものとの考え方がある。

 たとえば、相撲では力士がけがをしないように、そして、塩の殺菌効果をも兼ねて清めの塩を仕切りの際にまく。この塩は邪気をはらって土俵を神聖にするためだ。

 では、割烹店などで夕方、お客が来る少し前、店先の打ち水や盛られた白い塩が目に付く。この塩は何のおまじないか。

 昔、中国の皇帝には多くの女官(側室)がおり、夜毎、牛車に乗りそれぞれの屋敷を訪ねた。女官同士の競争が激しいので、ある女官は皇帝を引き寄せるため、牛は塩が好物ということをヒントにし、玄関先に塩を盛った。案の定、皇帝の牛車が屋敷前でピタリと止まり、この女官は塩のマグネット力で皇帝の寵愛を一人占めした(諸説在り)。

 今日、割烹店などにおいて嫌な客が帰ると、その邪気をはらうため、店先に清めの塩をまくことも。

 しかし、店先に塩を盛る風習は、清めの塩というよりも、まさに不安定な水商売ゆえ、千客万来の願いを込め、招き猫ならぬ、招き塩のマグネット効果を狙うものだ。

 そこで、競争の激しい観光業界でも、招き塩のマグネット効果の強みを発揮できれば、熱烈なファンが足げく通い、一人勝ち間違いなしだが。

(梅花女子大学教授)

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第37回「にっぽんの温泉100選」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 1位草津、2位下呂、3位道後

2023年度「5つ星の宿」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第37回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2023 年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月22日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒