
人間が生きていくために塩分は不可欠だ。古代ローマ時代、貴重なソルト(塩)は兵士や役人のサラリー(給料)となっていた。和製英語で給与(塩)をもらう人がサラリーマンだ。
また、日本の神道で塩は、神聖なものとの考え方がある。
たとえば、相撲では力士がけがをしないように、そして、塩の殺菌効果をも兼ねて清めの塩を仕切りの際にまく。この塩は邪気をはらって土俵を神聖にするためだ。
では、割烹店などで夕方、お客が来る少し前、店先の打ち水や盛られた白い塩が目に付く。この塩は何のおまじないか。
昔、中国の皇帝には多くの女官(側室)がおり、夜毎、牛車に乗りそれぞれの屋敷を訪ねた。女官同士の競争が激しいので、ある女官は皇帝を引き寄せるため、牛は塩が好物ということをヒントにし、玄関先に塩を盛った。案の定、皇帝の牛車が屋敷前でピタリと止まり、この女官は塩のマグネット力で皇帝の寵愛を一人占めした(諸説在り)。
今日、割烹店などにおいて嫌な客が帰ると、その邪気をはらうため、店先に清めの塩をまくことも。
しかし、店先に塩を盛る風習は、清めの塩というよりも、まさに不安定な水商売ゆえ、千客万来の願いを込め、招き猫ならぬ、招き塩のマグネット効果を狙うものだ。
そこで、競争の激しい観光業界でも、招き塩のマグネット効果の強みを発揮できれば、熱烈なファンが足げく通い、一人勝ち間違いなしだが。
(梅花女子大学教授)