【関西特別座談会】大阪・関西万博生かし「KANSAI」を世界に 

  • 2021年10月21日

左から、東井 関西観光本部代表理事、金井 近畿運輸局長、米村 前近畿経済産業局長

関西発!アフターコロナに向けた観光創生

 コロナ禍で観光業界は大きく影響を受けている。そのような中、政府の方針を受けて各省庁からはGo Toトラベルキャンペーンなど、各種支援メニューが用意され、国内経済に大きな効果を見せている。一方、関西ではコロナ禍を今後の観光誘客への準備期間と捉え、2025年に開催される大阪・関西万博に向けた準備や地域ブランドづくりによる観光、地域活性化への取り組みなどが進められている。今後の関西エリアにおける観光分野での取り組みについて、業界をリードする3氏に集まっていただき、語っていただいた。司会は本社・長木利通。(9月8日に大阪の近畿経済産業局で)

観光業界の現状

 ――コロナ禍で観光業界の回復が遅れているが、どう捉えているか。

 金井 関西のGDPは全国比で約15%であり、その中で訪日外国人の旅行消費は全国の約29%を占めていたが、コロナ禍でこのインバウンド需要が消滅した。国内旅行消費も全国比で約15%あったが、緊急事態宣言の発令などの影響で、今年の4月~6月の実績では約10%程度に減少している。観光業界は厳しい状況下にあるが、まずはどう維持、再生するかが課題であり、特に維持することに全力を尽くさなければならない。幸い業界にはこうした危機への共通認識がある。観光、交通、経済界を含め、今は足元を固め、今後どう再生するかを考える機会だと前向きに捉えてほしい。私は関西に7月から着任しているが、関西は観光資源が豊富かつ魅力的な地域であり、V字回復への可能性は大いに感じている。

近畿運輸局長 金井昭彦氏

 

 東井 鉄道を見ると、今年の4~6月は昨年1年に比べ回復傾向にある。人々がウィズコロナに慣れ、防疫措置を取りながら日々の生活をしている。観光を見ると、大阪、京都、神戸など大都市への戻りは少ない。一方、伊勢志摩や南紀など、地方リゾートには一定の人が訪れていると聞く。この1年半で、ウィズコロナでの観光の形をサービス提供側が学び、訪れる側もそれを前提に楽しむことに慣れてきた。コロナの収束時期は予測できないが、インバウンドを含め、観光への需要は強い。われわれが今できることは、観光インフラの維持に努め、行動変容の状況を把握して、インバウンドの受け入れ体制を整えていくということだと思う。

関西観光本部理事/専務理事 東井芳隆氏

 

 米村 2年前の初登庁前日、大阪の台所と言われる黒門市場を訪れた。外国人であふれ、多くが食べ歩きを楽しんでいた。G20が成功裏に終わり、「百舌鳥・古市古墳群」が世界遺産に登録されるなど、観光は上昇ムードだった。それが半年後にはコロナ禍で一転、インバウンド需要が蒸発した。その中で、事業の継続支援について、必ず先に希望はあると信じて取り組んできた。コロナ収束後に日本を訪れたい外国人の声が非常に多いとのデータもあり、ポストコロナのV字回復に希望がある。もう一つは、マイクロツーリズムが浸透し、近場での魅力探しが行われたこともチャンスだ。身近な風景や体験の魅力発掘が個人旅行客の新たな選択肢となる可能性が大きくなった。さまざまな復活への芽は出始め、われわれも一歩先を見据えた応援手法を考えていきたい。

前・近委経済産業局長(現・経済産業省 中小企業政策統括調整官)米村 猛氏

 

支援・需要喚起策

 ――現在行う取り組みや支援、また今後予定する需要喚起策は。

 金井 今は足元を見つめ直す時期だと考えている。観光庁では観光関連の支援メニューを多数用意しているが、まずは感染防止対策を徹底することが喫緊の課題である。地域観光事業支援や、地域全体で魅力と収益力を高める既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業などの支援メニューをしっかり使っていただきながら、感染防止対策を進め、安全性を高めてもらいたい。ワクチン接種証明の活用が今後議論となってくるが、これも一つの有効手段となり得る。いずれにせよ、関西ではインバウンドを含め、観光の再生について考える必要がある。関西の魅力の深さは底知れないので、足元の価値を見直し、素材を磨き上げ、PRするなど、先を見据えながら地道に取り組みを進めていただきたい。われわれは観光と交通の両方を所管するが、この二つをしっかりつなぐことが、利便性の向上につながる。昨今は、MaaSへの機運が高まってきており、関西でも横の連携を深めながら「関西MaaS」の形でまとめあげ、2025年に大阪・夢洲で開催される大阪・関西万博に向けて観光、交通、その他のサービスを組み合わせながら新しい観光を作り上げ、観光から全体を盛り上げていきたい。

 ――関西MaaSは起爆剤となりそうだ。

 金井 現在は鉄道事業者が中心となり検討している。今は観光と交通の両方が痛んでいるが、それらをつなぎ合わせる役割としてMaaSは有効だと考えている。われわれとしても、今後実現に向けて関係者ともしっかり議論していきたい。

 東井 インバウンドは2019年がピークだったが、関西には大きな課題があると言われた。一つは大阪、京都への集中。8、9割がこの2カ所に集中し、それが加速しつつあった。関西にはぜいたくなほど観光資源があるが、それが総花的な訴求につながっているきらいがあり、広域観光の課題である。そこでわれわれは、広域観光の原点であるルート作りに取り組み、関西各地のDMOと連携しながら、大熊野古道、北国路などテーマやストーリーとともに8本のルート形成してきた。また、文化やアクティビティに焦点を当てたテーマ観光も増えつつある。これらを「THE EXCITING KANSAI」と名付け、ウェブ等で発信するほか、海外の高級旅行誌「ナショナルジオフィックトラベラー」に掲載するなど認知度向上に取り組んでいる。情報発信ではもう一つ、昨年に海外向けの関西プロモーション3分動画を2本公開した。1カ月もたたないうちに、それぞれが500万PVを稼いだ。多くの外国人が関西に興味を持ち、潜在需要も大きいことが改めて分かった。われわれはインバウンド専門DMOだが、現下の状況に鑑み、日本人向けに、「これぞ関西」「関西唯一」を伝える「Premium関西」というサイトを立ち上げた。食、宿、自然、文化など関西の上質な旅行を提案している。

 米村 今一番大事にしていることは、事業者への支援を継続すること。例えば、旅館の事業が苦しくなり仲居さん退職させると、需要回復期には他へ移り戻って来るとは限らない。今後事業を残すためにも、産業政策の中でさまざまな補助金を用意している。宿泊業、飲食店が使えるものとして、サービス、IT関連の補助金や、低感染リスク型ビジネス枠の小規模事業者持続化補助金など、コロナの中で頑張る人が使えるものがある。経産局の職員数は全体で300人だが、皆がいろいろな分野でPRして、少なくとも、施策を知らないことで事業継続を諦めることがないように取り組んでいる。

 

「地域ブランドの活用」

 ――関西では地域ブランドの支援を通じた地域活性化を推進している。

 米村 観光庁在籍時に「観光とは何だろう」と考え、「地域の誇りを取り戻すこと」だと思い至った。自分のいる場所で良いものを探して、磨き上げる。それを感じに来てもらって、喜んでくれて、その反応が地域の皆にフィードバックされ、やる気が増すという「好循環の起点」が観光だ。この考え方をベースに、経産局でも何か貢献したいと「地域ブランドプロジェクト」を始めた。現在は12の地域・商品を選んで動いている。世界に羽ばたけるポテンシャルを持ち、やる気がある人に集まってもらった。ブランド支援にはいろんな流儀があるが、型を押し付けるのではなく、何をしたらどうなるかを若い人たちも含め議論しながら進めている。通常、国のプロジェクトの多くは1年の完結型だが、このプロジェクトでは数年かけて本物づくりを行う。例えば、大阪府泉佐野市には泉州タオルがある。ブランドという面では今治に一歩後れを取っていた感もあるようだが、最近大きな進歩があった。泉州タオルの泉は白に水と書くように奇麗な水を使い、製法は後晒し製法を使うなど、こだわり抜いたタオルなので、「水と生きるタオル」をブランドコンセプトに決め、良さをどう知ってもらうかの課題に取り組んでいる。さらに、12ブランドの間のコラボも意識して地域ブランドネットワークサロンも設けた。経産局だけでなく、運輸局や関西観光本部、他に財務局、国税局、農政局、金融機関、交通事業者などの力を借りて、さまざまな可能性を考えていきたい。そして、その先の万博を意識しながら、地域発の新たな切り口としたい。

 金井 コロナで人流が抑えられ、人の移動の大切さ、ニーズ、価値が高まっている。一方、物流は動き、経済社会を成り立たせている。運輸局は観光、物流を扱うが、観光や地域の魅力の価値を他地域や海外に輸出するという視点を持つ地域に観光客が訪れると、込められた思いが伝わり、国内外にも広まるだろう。関西の価値を高めるには、自身の得意分野だけでなく、全体でどう関西の魅力を高め、経済を回復させていくかという視点を持ってもらいたい。地域ブランドの推進の話もその一つ。非常に面白い取り組みであり、われわれも何ができるかを考えていく。

 東井 観光の原点は地域である。観光の語源とされる「国の光を観る」は、地域の光を観るということである。われわれは現在、万博に向けた関西観光のグランドデザインを検討しているが、有識者からは「最後は地域の幸せにつながらなければ観光を進める意味はない」と言われている。地域ブランドプロジェクトもその脈絡で考えると観光と一体と考える。商品をはじめとして地域のブランドの作り手は発信手法に悩んでおり、そこにわれわれが支援できることがあると考える。マーケティングに関しては、今後はマスマーケットではなく、スモールマスの時代になる。徹底的にスモールマスを狙って、生まれる商品、サービスを束ねれば、多彩な色を発し、関西の多彩で豊富な魅力を表現することになると考えている。もう一つ、地域ブランドづくりではストーリーマーケティングが大切だ。例えば、なぜ福井の鯖江でメガネを作り、売るのかなど、ストーリーには訴求力がある。スモールマス&ストーリーの二つが次の関西のインバウンド作りのための新しい新境地、誘客のキーワードとなる。今年1月には台湾とのオンライン大商談会を開催したが、両者で140社が集まり、5日間で1千商談が行われた。地域ブランドに関心がある人も多く、そこからテーマ観光へともつながっている。

大阪・関西万博

 ――今夏は東京オリンピック・パラリンピックが開催され、世界に日本が発信された。次に大阪・関西万博が2025年に開かれる。今後の取り組みは。

 金井 万博をターゲットに関西全体がどのように協力し、何ができるかを考えることが大事。関西の観光を産業、インフラとして定着させ、地域のポテンシャルを底上げすることにつなげなければならない。まずは足元を見て変えられるかどうかだ。25年はコロナを乗り越えてターゲットとしていくのに良い目標だ。そのためにも、関西の魅力の再確認、磨き上げをし、ストーリーを持って取り組んでいきたい。これまで主要な観光地でない地域も含めた磨き上げを通じ、観光の広がりにつなげたい。関西では、テクノロジーを使い観光と交通を結びつけ、利便性を高めることを官民そろって取り組んでいく素地ができている。万博があることはチャンスであり、万博に向けて一丸となることは象徴としても良いことである。われわれも旗を振り、共に取り組んでいく。

 ――大阪・関西万博が開催されれば約2820万人が夢洲に訪れる。

 東井 会場から人を回さなければならない。1970年時は多分回っていない。どう回すかがカギだ。

 金井 アクセスについては、MaaSなどのデータ基盤を用いることで、来場者の流れをある程度統一的にコントロール、マネジメントすることができる。国交省ではこれまで全国各地でのMaaSの実証実験を支援してきたが、今後は大きな枠組みでの実証が必要であり、関西MaaSは大きな可能性がある。

 米村 オリパラはスポーツの祭典だが、日本の魅力を内外に示した面も大きい。経産省でもオリパラを支える中小企業を紹介する特集ページを作成し、関西からも義肢を作る企業などを紹介したりした。万博は、まさに産業の、イノベーションの祭典だ。オリパラ後の最大のイベントと言って良い。これが関西で行われる意味をかみしめたい。参加するオプションが8月の博覧会協会のオンライン説明会で示された。パビリオン出展以外にも、イベント参加、テーマ館を一緒に作り上げる技術的な協力や、実証を兼ねた物品提供や、レストラン出店、ロゴの使用などいろいろな参加の仕方がある。10月28日まで申し込めば動画が見られるので参考にしてほしい。あと3年半となるが、万博に向けて、皆でどう盛り上がりを作るか。テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」という身近でありながら深遠なものだ。コロナを経て、いのちの本質に肉薄するかけがえのない体験が共有できるはずだ。

 東井 コロナの中でオリパラという大規模イベントを遂行した。日本はコントロールができる国だということを、世界に発信したと考える。ウィズコロナ時代では、インバウンドもワクチン接種証明書の活用などが論点となるであろうが、日本は的確に対処できると考える。次の万博を契機に、観光消費を上げ、観光を関西経済の柱にしなければならない。インバウンドの滞在日数を1日増やすだけでも観光消費は2200億円増える。消費拡大を実現するためには関西全体として、推進力が必要だ。皆が同じ方向に向かって、自発的に連携する「ONE KANSAI」で取り組んでいきたい。さらに、経済界は、万博を関西の万博で終わらせず、西日本全体が裨益(ひえき)するべく議論を始めている。砂鉄の1粒1粒を集めるのは大変だが、磁石が一つあれば集まる。その磁石は万博だけでなく、MaaSなどシンボリックな技術革新かもしれない。連携が鍵である。万博までの期間も、文化庁の京都移転、北陸新幹線敦賀開業、うめきた2期の一部開業など、関西には耳目をひくプロジェクトが多く、追い風が吹く。一つ一つをつなげて、連携して大きく、そして連続して力強く発信していくことが大事だ。万博をジャンプ台として飛躍する姿をイメージして、「KANSAI」の認知を世界的に高めていきたい。

 

観光業界にメッセージ

 ――最後に、観光業界の人たちにメッセージを。

 金井 われわれは、支援メニューをしっかり作り、何を目指してどう進むのかという考え方を示していく。地域の人たちには、足元の観光素材にストーリー性を持たせ、戦略を組み合わせてもらいたい。それが世界に評価されることにつながる。少なくとも関西にはそういう在り方ができる素地ある。各地域で生まれた観光素材が機能すると関西全体の経済にも裨益する。今の時間を生かし、地域の掘り下げをしてもらいたい。

 米村 目下一番大事なことはコロナを乗り切ってもらうこと。そこに向けた政策をしっかり届けていく。ワクチンの接種が進み、少し明かりが見え始めた。今後必ずV字回復の局面が訪れる。インバウンド関連のベストプラクティスを表彰する「はなやか関西魅力アップアワード」という取り組みがあるが、コロナの中でも、いや、コロナだからこそ頑張っている人たちを見つけ出し、それを全国、全世界に向けて発信するお手伝いをしたい。これも万博を意識したい。万博は何かと考えたときに、「さまざまな未来を引き寄せ、夢洲という1点に集約させ、つなぎ、そして世界に発信する装置」と捉えたい。万博を意識することで、さまざまなつながりが生まれる。自治体、地域、企業、イノベーション、ブランド、さまざまなつながりを生み出したい。重要と思うのが、観光とデジタル事業者のつながり強化だ。観光DXの進化と実装に向け、新たな産業を創出する意気込みで連携を深めていきたい。「夢洲」の盛況だけではなく、つながりが広がって、関西、日本が大きく変わってこそ、万博の大成功と言えるに違いない。

 東井 日本だけでなく各国とも観光については非常に厳しい状況にある。観光の最前線は大変なご苦労をされているが、国内観光は戻りも早いと思う。他方、インバウンド需要はペントアップされているのでそれまでの間、地域の方々と共に再開に向けて準備と機運醸成活動を行っていきたい。観光セクターに止まらず、さまざまな方々の参画を得て、「ONE KANSAI」で万博に向けて進んでいきたい。

 

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