【道標 経営のヒント109】パワースポットとSNS映え 福島規子


 大手旅行会社の調査によると、日帰りバス旅行には人気のキーワードというのがあるらしい。

 一つ目はお馴染み「食べ放題」。ステーキ、しゃぶしゃぶ、蟹、スイーツなど、最近では何でもありの感がなきにしもあらず。食材原価や店で食べた場合の消費額を考えて「お得感」が分かりやすいというのも人気の秘密なのだろう。

 二つ目は「お土産付き」。季節の梨2キロ、野菜3キロ詰め放題といったようにお土産の総重量を示すのがトレンドらしい。

 三つ目は「パワースポット」。パワースポットとは和製英語で、その定義は諸説あるが、主に土地のエネルギー(波動)が高く、パワーが眠っている場所や建物のことを指す。

 さらにパワースポットは、出雲大社や伊勢神宮といった神社仏閣の「宗教系」、富士山や分杭(ぶんくい)峠(長野)などの「自然系」、そして、遺跡や由緒の「遺跡系」と、京都、皇居、沖縄の首里城といった「人工系」の四つに分類される。

 キーワードの四つ目は「フルーツ狩り」。メロンやいちじくなどの高級果物狩りだけではなく、最近では、収穫したフルーツをジャムにするといった体験もプラスされるなど進化しつつある。

 そして、最後のキーワードが「SNS映え」。インスタグラムにオシャレな写真をアップして、「いいね!」を狙うのが目的だ。

 あるテレビ番組でこの五つのキーワードごとにバスツアーを作り、旅好き女性100人に、どのツアーに参加したいか選んでもらうという企画を実施した。参加者は20代女性の2人連れから、幼児を抱いたママさんグループや旅慣れた熟年女性までさまざま。

 筆者の順位予測では1位が食べ放題日帰りバスツアー、2位が土産付き、3位がフルーツ狩りだったのだが、実際に支持を集めて1位になったのは、「パワースポットを巡る日帰りバスツアー」だった。

 このツアーを選択した女性たちは、口々に「幸せになりたい」「パワースポットに興味がある」と言う。「食べ放題」や「お土産付き」プランがもはや必ずしも旅行目的の第1位とはならない。

 翻って旅館業界のキーワードを考えてみると「温泉」「料理」「露天風呂付き客室」といったところだろうか。加えて「近隣パワースポットの散策」や「旅館でSNS映えする1枚を」といった切り口もアリだろう。

 パワースポットもSNS映えもその場に行くことによってのみ成立し、コモディティ化しないことがミソだ。まずは、近所のパワースポット探しと、自館のインスタ映えする空間づくりから始めたい。

 
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