【道標 経営のヒント 344】SDGsで旅館の経営基盤を強化する 佐々山 茂


 「持続可能な開発」と相反する言葉で成り立つSDGsの着地点を持続可能な旅館の姿に重ね、5年後10年後を見ながらSDGsの17項目の中で関連深い10のターゲットに絞り方向性を探っています。

 旅館は時代時代で姿を変え、その地域の生活文化、食文化、伝統文化を生きた形で継承し、持続することに意味があり、外部からの資本、エネルギー、食材で回るグローバル経済の脆弱(ぜいじゃく)性が見える中、地域循環型経営に移行する社会情勢の中でその役割は大きくなっています。しかし水光熱使用量が多いためにCO2排出量が家庭の10倍と多く、設備の老朽化、無駄な動線、耐震性の問題などその経営基盤は脆弱です。自動車産業はEVシフトという大転換をしています。宿泊業界も追い風を感じてSDGsの考え方で転換する時と思います。

 2019年10月に「食品ロスの削減の推進に関する法律」が施行され、2021年4月に「CO2排出量を2030年に13年比で46%削減する政府目標」が示され、また2022年4月に「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が施行されました。このような社会情勢の中でSDGsに取り組み、ESG経営にのっとることは宿泊産業にとって必要条件とみられ、乗り遅れまい、取り残されまいという気持ちが強いと思います。社会的な外部要因が強く働き、取り組まざるを得ない状況なのでしょう。

 内部要因から見るとまた違った状況になります。2015年6月に当時の安倍首相が特に生産性の低いサービス5業種に焦点を当て、「サービス業の生産性向上協議会」が設けられ、宿泊業界でも広く活動が広まりましたが、その効果はあまり感じません。またコロナ禍にウクライナ紛争が加わり、原油価格が1バレル110ドル台と2019年の50ドル台からほぼ倍になり、電気料金も40%程度値上げされる話も聞いています。1人当たりの水光熱費が業界平均1350円であったのが直近の資料はありませんが2千円になっていても不思議はありません。

 私の手元にある1991年の旅館の建設計画書を見ると、ちょうどバブルの頃で建設坪単価が110万円で同じものを今造ると180万円はかかると思いますが、お客さま1人当たりの宿泊消費単価は当時とあまり変わらず、定員は10帖5名で計算していたのが今は個人客で1室2.5人に半減しているのが実情です。

 観光産業は成長産業といわれていますが、その足元は脆弱だと思います。事業再構築、高付加価値化事業、そしてエネルギー関連の補助金を利用しながら、事業基盤を整備することが緊急の課題と思います。この課題をSDGsで整理し、エコ・小の手法で解決したいと思っています。

 
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