【道標 経営のヒント 322】15分間の奇跡 小倉理加

  • 2022年3月23日

 アメリカ・ワシントン市のポトマック河畔の桜を見学したことがある。花見客でごった返していて、その人気は日本並みだった。1910年、東京市が寄贈したのだが、長旅のせいか害虫が発生したために焼却処分された。2年後、東京市は再挑戦、接ぎ木を工夫してワシントンの地に桜を根付かせ、日米交流のシンボルとなっている。

 私がアフガニスタン滞在中、日本大使館は日本から桜の苗木を取り寄せ、植えたけれど育たなかった。気候があまりにも違いすぎたと思われた。砂漠の国では桜は無理だった。

 ポトマック河畔の桜も害虫対策がとられ、消毒は毎年の行事らしい。わが家にも1本太いしだれ桜を植えているが、5月か6月には消毒して害虫を寄せつけないようにしている。

 そもそも桜は、風通しのいい場所に植えられてきたのは、害虫を風で落とすためらしいが、毛虫にかかれば、すぐに葉を食われてしまい、黒い小粒のフンに泣かされる。が、毛虫や日本の害虫は、薬剤の撒布でこと足りるが、外来種の害虫には手を焼く。数年前、日体大は創立125周年を記念して、スペイン産のオリーブを植樹した。樹齢300年の古木で、見事に根付いて繁茂した。実の収穫も楽しませてくれたが、突然、元気がなくなった。

 造園会社の報告によれば、「クビアカツヤカミキリ」という外来種による被害だという。体長3センチほどのカミキリ虫で、幼虫は生木を食して成長すると毎日新聞の記事にあった。桜や桃などもターゲットにされるそうで、オリーブもその餌食となり、衰弱させられたのだ。造園会社の担当者の発見が早かったため、オリーブは死なずにすんだが、深く木の中にもぐり込むカミキリ虫なので、退治するのに苦労したと報告を受けた。

 この害虫は、中国や朝鮮半島などに生息しているらしいが、木材や木箱等にまぎれ込んで日本へ上陸、早いスピードで各地に広がりつつある。新たな脅威となっていて、薬剤にも強いというから困る。全国に桜の名所があるが、このカミキリ虫にやられていないか心配である。毎日新聞の記事では、繁殖力が強く、2012年に初めて愛知県で発見されたのを皮切りに関東、近畿、四国地方へまで広がっているという。とりわけ果樹が心配である。

 政府は、2018年に飼育を禁止する特定外来生物にこの「クビアカツヤカミキリ」を指定した。ここまでグローバル化が進んでくると、期待しないものまでまぎれ込んでくる。特に果樹園や桜並木、公園が深刻な被害を受ける可能性があるだけに、各自治体も神経をとがらせる。人海戦術によって、1本1本の樹々を調査せねばならないだけに、広く住民の協力を得てカミキリ虫を退治してほしい。

 自治体のみならず、私たち住民も、公園や公道の樹木をチェックするぐらい気を使う必要がある。数年前からヒアリ騒動が各地で起こるが、外来種の脅威を政府、自治体は見逃すわけにはまいらない状況下にある。グローバル化の光と陰を体感するが、害虫の繁殖を食い止める策が求められる。幼虫は、どんな形をしているのか、成虫はどんな動きをするのか、自治体は住民に広報すべきである。春から夏にかけて、成虫は活発に動くというから、住民を巻き込んで退治しようではないか。

 日体大のオリーブは、なかなか元気にならず、カミキリ虫の恐さを教えられた。幹から新しい枝を出してはいるが、元の姿に戻るのには時間がかかりそうだ。いずれにせよ、各自治体は大規模な調査を行い、害虫対策に取り組み樹木を守るべきである。桜のシーズンに花見のできない地域にしないように努力し、住民の豊かな心を育てなければならない。

 害虫の駆除は一筋縄では進まない。多くの人々、住民の協力が不可欠である。自治体は、しっかり広報して情報を集めることも調査とともに進め、専門家の手を借りて退治してほしい。そのままにしておけば、深刻な被害を受けることを心に刻んで手を打つべし。

 
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