【道標 経営のヒント 321】大人の発達障害、生きづらさに寄り添う寛容さを 福島規子

  • 2022年3月17日

 新卒採用のAさんは、帰国子女かつ有名大学を卒業した期待の新人だった。フロントに配属されたAさんだったが、次第に首を傾げるような発言や行動が目立ち始めた。

 たとえば、11時~12時のチェックアウト時間になると、なぜかAさんは姿を消す。最初の数日間は、Aさんの姿が見えなくても「トイレにでも行ったのか」「別の仕事を頼まれたのか」と、誰も気に留めていなかった。

 だが、連休明けのある日、あまりの忙しさに上司がAさんを探しに行くと、Aさんは1人、従業員食堂でランチをとっていた。驚いた上司が、「何しているの?」と尋ねると「お昼なんで、ご飯を食べていました」と悪びれた風もない。いら立ちながら「ほかの人は仕事をしているのに、なぜ、Aさんだけ休憩をとっているの?」と詰め寄ると、Aさんはきょとんとした表情で「えっ、12時になったから食事していただけですけど」と一言。

 Aさんは自身の行動が他者に与える影響や他者の感情を想像することが苦手だ。また、自分が決めたルールには強いこだわりを持つ。

 冬のある日。チェックアウト業務に忙殺されていると、「冷めないうちにどうぞ」と肉まんが差し入れられた。スタッフが「ありがとうございます」と礼を述べ、事務所内のデスクに置くと、すかさずAさんが手を伸ばし肉まんにかぶりついた。一同があぜんとしているとAさんは「皆さんも冷めないうちにどうぞ」と笑顔で肉まんが入った袋を差し出した。相手の言葉を言われたままに受け取ってしまうのもAさんの特性だ。

 このような振る舞いやパターン化した行動への強いこだわりは、発達障害の一種である「広汎性発達障害」にみられる特徴である。厚労省は広汎性発達障害の特性として次の三つを挙げている。(1)人との社会的な相互関係を築くことが苦手(2)他者と言葉等のやりとりで関係性を築くのが難しい(3)興味関心の幅の狭さ、こだわりの強さである。

 また、Aさんは業務日報を漢字を使わず、平仮名だけで書くが、文章は論理性に欠け、文法上の誤りも目立つ。知的能力には問題がないにも関わらず、書くことだけが著しく困難な状態を「書字障害」と呼ぶ。書字障害は「学習障害」の一つで、ほかにも読むことが困難な識字障害や計算が極端に苦手な算数障害などがある。学習障害も発達障害の一種である。

 発達障害は生まれつきの脳の働き方の違いによるものであり、治ることはない。正直、Aさんが発達障害なのかどうかは分からない。しかし、Aさんが引き起こすこもごもと同じくらい、Aさん自身も戸惑い、自信を失いかけている可能性はある。

 Aさんが抱える生きづらさに寄り添えるような「寛容な組織文化」の醸成に努めたい。

 
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