【道標 経営のヒント 304】和歌山の水道橋落下と機構変動 佐々山 茂


 和歌山市の紀の川に架かる水道橋が崩落して市北部の6万戸が断水したのが10月3日で、次の日に断水地域の旅館に打ち合わせに行った。緊急事態宣言が解除されてこれからという時に、1週間営業ができなくなり、経営者もため息をついていた。

 この旅館ではつい最近まで井戸を使っていたが、水の使用量が増え、水質の問題などで今は使っていない。

 日本は水資源が豊富で、湯水のごとく使うというように水を使えるのは当たり前だが、断水するとその有難みがよく分かる。

 井戸などの自家水を利用しているところでは、季節により水の量を気にするが、水道を使っていると量を気にしない。家庭での水使用量1人1日当たり150から200リットルのうち40%は風呂で、残りはトイレ、炊事、洗濯などで100リットル程度。

 一方、旅館での1人当たりの水使用量は500から千リットルになり、千リットル以上使う旅館もかなりの割合ある。それに温泉が加わると、水資源の使用量はゆうに2千リットルを超えている。

 メーターが付いていないので水資源がどこで使われているか分からないが、お客さんが使うのはトイレとお風呂のシャワー程度で、大部分は施設側が使っている。特に多いのは食器洗浄とお風呂関係で水資源を無駄に浪費している。水の使用量が多い旅館は温暖化効果ガスのCO2排出量も多いことから、給湯の無駄使いも多いことが分かる。

 千リットルの15度の水を60度のお湯にするだけで油代が500円はかかる。水資源を節約することは水光熱費の削減につながり、気候変動問題にも役に立つ。

 私たちが利用している水、油資源は太陽エネルギーに由来していて有限で、地球上で循環しているものを利用させてもらっている。

 昔は井戸水やまきといった人手のかかるエネルギーを使っていたが、今は考える必要もなく、労力もかからずに蛇口をひねるか、スイッチを押すだけで使えることから、必要以上に使われ、気候変動につながっている。

 私たちが進めているエコ・小活動では、旅館の水資源やエネルギー使用量は業界平均の50%で事足りると考えていて、再エネを導入する前提として、1人当たり水使用量500リットル、CO2排出量15キログラムを目標に活動している。断水の日は、受水槽に残った水の量を気にしながら一晩を過ごした。

 
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