【道標 経営のヒント 298】夏の富士、最後の日 小倉理加

  • 2021年9月17日

今週頭に、初冠雪の報告が相次いだ富士山。その前日の日曜日、富士山へ登頂した。山小屋も山頂の神社も、この日が最終日。雪が降るのも当然と思えるほど、震えるように寒い1日だった。

正直、今まで一度も富士登山に興味がなかった。ところが、ある旅行会社で1人参加ができる上、登頂率が90%というものを見つけ、無性に惹(ひ)かれてしまったのだ。しかも、トレッキングレベルは初心者程度とある。さらに、今年はコロナ禍の影響で山小屋も受け入れ人数を減らしており、半個室で宿泊できるらしい。「今」ではないと決行できない幾多の理由におされて、申し込んでしまった。

まさに、”しまった”という言葉が正しい。この日、何度、後悔の念に襲われたか分からない。5合目から6合目あたりまでは疲れも感じず進むことができたが、7合目へ向かう岩場から8合目に向かう頃には、下山の希望もちらつくほどのフラフラ具合。前夜、仕事で2時間しか眠れなかったことを心で呪いながら、とにかく必死で足を運ぶ。やっと8合目に到着しても、宿泊する山小屋はさらに上へ40分ほど登ったところだという。

意識がもうろうとなりながら、最後の40分を上がりきり、荷物を解いた。あまりの疲労感で夕食もほとんど喉を通らず、「絶対、明日は下山しよう」と心に誓い、とにかく寝袋にくるまった。

これまでよく仕事で「今、何合目?」などと冗談で富士登山に例えていたことを反省した。本物の富士登山に比べたら、眠くてきつい仕事など大したことはないと思えてくる。

翌朝2時に目が覚めた。人間現金なもので、よく眠ると気持ちが前向きになり、今日なら山頂へ行ける気がしてきた。ちょうど、前夜の予報では、この日の悪天候が予想され、山頂へ行けない可能性が高かったが、予報が外れ、風雨がやんだ。

再び、ここまで登ってくる苦労を考えたら、一生に一度の辛さと思い、登りきってしまおうと腹が決まった。それがクライマーズハイなのかは分からないが、途中挫折しそうになっても、なんとか日本一高い山へ到着。ご来光は、江戸時代の風習にならって、8合目で拝んだ。昔、山頂からのご来光参拝は見下ろすことになるので不謹慎とされ、8合目で見るのが慣わしだったそうだ。

必死すぎて景色を堪能する余裕まではなかったが、達成感は十分。途中、あれだけもう登山などこりごりと思ったのに、下山してすぐに次に登る山を検索していたりするから、山の魅力は侮れない。

最後に、山頂を目指しているときに何度も心が折れかけては思い出しながら進んだ名言で締めくくりたい。

「山を低くすることはできない。自分を高めるしかないのだ」。アメリカの登山家、トッド・スキナーの言葉である。

 
 
 
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