本稿を執筆している7月17日、「Go Toトラベルキャンペーン」の実施が決まり、観光産業には一筋の光明が見えてきた。しかし新型コロナウイルスの感染者数は増加傾向にあり、受け入れ側としては気が抜けない。特に接待を伴う飲食での感染が疑われる中、旅館業界でもコンパニオンが入る宴会では厳しい対応が求められるところだ。
さて、先日、コンパニオンを入れた団体宴会で問題が起こった。客数は20名で、いずれもマスクは着用していない。一方、コンパニオンはマスクの上からフェイスガードを着け、顔全体を覆った状態で接客に当たっていた。酔いがまわり顧客とコンパニオンの距離が徐々に近づいてきた頃、顧客がコンパニオンにフェイスガードを外すよう執拗(しつよう)に迫り始めた。コンパニオンは何度か断ったのだが、結局のところ断り切れずにフェイスガードを外して接客に当たってしまったという。
コンパニオンには「お客さまの心情を害したくない」との思いもあるだろう。またその場にいた接客係も、お客さまにはフェイスガードを装着した接客についてご理解いただくようお願いしたが聞き入れてもらえなかった、とうなだれる。
東京医療保健大学大学院の菅原えりさ教授によると、「フェイスガードは主に目の粘膜にウイルスが入り込むことを防ぐために使うもの」(NHK「おはよう日本」より)であり、医療現場では必須だという。すでに百貨店などの販売員はフェイスガードを装着しているが、飲食店においても(一社)日本フードサービス協会と(一社)全国生活衛生同業組合中央会が共同で策定したガイドラインでは「店舗ではマスクやフェイスガードを適切に着用し頻繁かつ適切な手洗いを徹底する」(令和2年5月14日付)と定められている。
やはり、ここは従業員の命を守るためにもフェイスガード装着による接待について会社として対策を確定し、顧客に順守してもらうことが重要だろう。たとえば、接客時のフェイスガード装着を了承してもらうことや、フェイスガードに触れたり、外すよう強要したりしないといったルールを文書化し、事前に幹事から参加者に周知してもらうという方法もある。また、現場のスタッフ同士で、「お客さまが不快にならない断り方」を話し合うのも有効だろう。ベテランともなれば、機転の利いた言い方で場を和ませながら、うまく断る方法もあるに違いない。
最近では、スタイリッシュなフェイスガードも登場しており、木村拓哉(キムタク)がインスタグラムにアップした髪型の乱れを気にせず装着できる超軽量眼鏡タイプはコンパニオンや接客係にもお薦めだ。フェイスガードが新しい接客様式になりつつある今、制服の1アイテムとしてデザイン性にもこだわりたい。