【道標 経営のヒント 244】ウィズコロナ時代の新しい需要 佐々山建築設計社長 佐々山 茂

  • 2020年7月24日

 各地の旅館で個人客はようやく動き出したようですが、団体客に動きはありません。団体客がなくなると1室当たり利用人員が2.5人から2人に減り、入り込み人員はよくて70%程度に落ちて売り上げに対する固定費が上がり、ビジネスとしての見直しが迫られます。先日伺った旅館も、団体は諦めたが個人客になって単価は上がったと言っていました。

 一般的に旅館の延べ床面積を客室数で割ると140平方メートルが中央値となり、10帖5名で換算すると収容1人当たり28平方メートルとなり、一時代前に旅館を計画するときの目安の数字に合います。昭和の時代に面積効率が良い投資で稼働率を上げてビジネスモデルとして成立した数字です。

 ウイズコロナ時代には1室2名になると1人当たり70平方メートルとなって、面積効率が悪くなり、そのままにしておけば水道光熱費、清掃費などの経費が3割上がります。また施設面でも宴会場は稼働せず、団体用の什器(じゅうき)などが場所をとり、客室にはめったに使わない5セットの寝具があるなどの無駄が生じます。ウイズコロナ時代への対応が急がれます。100名の宿泊客が70名になるなら50名が1泊で20名が2泊になれば90泊となります。

 以前、観光庁の宿泊動向調査を分析したところ滞在数で旅館が1.18泊に対してシティホテルが1.37泊と宿泊タイプ別で旅館が一番低かったです。沖縄が2泊、東北が1.27泊でその他の地域は1.1泊台でした。

 湯治としての歴史がありますが、近年は記念日などのイベントでの1泊旅行が多く、温泉の価値、地域の価値を生かし切れていないように感じます。地域の食と文化、景勝をめぐり、良い温泉に漬かる滞在型の旅は、今は行くことのできない海外旅行の代替として十分価値があります。

 先月1年検査で伺った旅館で偶然見たのですが、30代の男性がロビーの庭に面したカウンターでワーケーションをしていました。ジャズが流れ、フリードリンクのコーヒーもあり、いつでも温泉に入れる空間はワーケーションに適しているようで5連泊していました。

 大手企業がオフィスを見直し、小売も実店舗販売が減少し、都市のビルに集中していた機能が広い空間に分散し、建物の用途にも変化が生じます。旅館には多様な時間と空間があり、サービスが付随する不動産を持つ旅館は新しい需要の受け皿になる可能性があります。旅館を科学することでレジリエンスな業態としてウイズコロナ時代の新しい役割の創出に期待したいです。

 
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