【道標 経営のヒント 225】新卒採用は「スカウト型」にかじをきろう 九州国際大学教授 福島規子


 新卒採用全体が学生に優位な「売り手市場」と言われて久しい。以前は大手企業の採用選考が終わったあとに、中小企業が本格的な採用に乗りだすといった流れもあったが、最近では少子化の影響もあり、中小企業、特に、旅館業界に流れてくる学生の数は激減している。

 また、採用を前提にインターンシップ生を受け入れてはみたものの、接客現場のオモテとウラのギャップに戸惑ったのか、入社を打診しても、「働くのはちょっと」と断られてしまうことも少なくない。

 そこで、新たな採用手段として提案するのが、新卒者を対象とした「スカウト型」採用システムである。

 従来は、リクナビやマイナビといった大手就職サイトに登録し、学生からのエントリーを待って、面接、内定という流れが主だった。大手企業であれば合同企業説明会にブースを出展したり、大学等で単独説明会を実施したりすることも可能だが、中小企業が大手並みの資金を投入することは難しい。

 しかし一方で、大手企業にも悩みはある。人気企業であればあるほど応募が殺到し、応募者をさばくだけで膨大な手間と時間が掛かってしまうという。

 このような課題を解決すべく登場したのが、企業から学生に直接オファーを送ることができる「スカウト型」新卒採用サイトである。企業は学生からのエントリーを待つことなく、自ら登録学生の情報を検索して「会いたい学生」にコンタクトを取り、直接、採用試験へと結び付けることができるのだ。

 この種のサイトはいくつかあるが、主要サイトは2社。1社は登録学生数12万7千人を誇る「OfferBox」で、株式会社i―plugが運営する。もう1社は株式会社グローアップが手掛ける「キミスカ」で、登録学生数は7万7千人。ちなみに、二大就活サイト「マイナビ2020」の登録学生数は約90万人、「リクナビ2020」は約80万人と桁違いの規模だ。

 学生からの評判も高い「OfferBox」の仕組みは次の通り。

 まず学生が同サイトに登録すると、人工知能が企業に代わって学生を検索し、「企業が会いたい学生」順に検索結果を表示してくれる。企業はその検索結果をもとに採用したい学生にのみオファーを送り、学生からの承認を得て、即採用試験となる。

 また、スタンダードプランに登録すると「外国人留学生でTOEIC695点以上」といった一定基準を満たす学生だけを登録させるサービスを利用することもできる。欲しい人材をピンポイントで狙えるだけではなく、採用後のミスマッチの回避も期待できる。

 地方には小粒でもキラリと光る健全経営の旅館は数多くある。業界全体で優秀な新卒者を数多く受け入れ、経営の足腰を強くしていくためにもスカウト型採用システムは一考する価値があるだろう。

 
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