【道標 経営のヒント 212】日常化する災害に備えて 佐々山建築設計社長 佐々山 茂

  • 2019年11月14日

 昨年の西日本豪雨、台風21号の記憶がまだ新しい中、今年は台風15号、19号に続き豪雨が関東以北を直撃した。19号では自宅も瞬間最大40メートルの強風で窓がきしみ、夜の9時ごろに危険を感じ、家族を北側の寝室に避難させ、浴槽に水を溜めた。ガラスは50メートル/秒ほどの耐風圧があるが、飛来物が当たれば吹き飛ぶ。

 15号では館山市で52メートル/秒を超える暴風を記録し、倒木による停電や屋根の飛散など甚大な被害が発生した。建築基準法での風速は館山で38メートル/秒となっているが、今回はそれを超えた。19号では箱根の降水量が千ミリを超えて交通が寸断され、千曲川では降水量550ミリを記録し、大規模な氾濫が起きた。国立天文台の理科年表では横浜が日量287ミリ、長野が日量125ミリになっていて、設計ではその値を参考にしているが、その基準をはるかに超えた。

 19号が通過した翌日に心配になってクライアントに状況確認のメールを打ったが、皆さん直接被害はなかったものの、停電、交通の遮断、キャンセルなど二次被害が起きた。1日半停電し、一時陸の孤島となった旅館では、前もってバスの軽油タンクを満タンにして、基準で30分しか持たない非常用自家発電機にその軽油を足しつつ、発電機が壊れないように気を付けて最低限の電気を確保した。自家用車のお客さまには寸断した道路網の中で安全なルートを探し、管理者と交渉して通過させ、そのままお泊まりになったお客さまには受水槽の残った水でしのぎ、次の日のお昼は焼きそばを無料で提供した。非常時での冷静で真摯(しんし)な対応がお客さまのこころに伝わり「必ず帰って来ます」との言葉を残してお帰りになった。停電のあった他の旅館でも非常時にこそ社員の力が発揮され、社員への信頼感を深めたとの社長の言葉が印象に残った。

 最近は線状降雨帯という言葉がよく聞かれ、気候変動の関係か自然の猛威が頻発し、災害という非常時が日常になった感がある。現代は電気の供給が止まると何もできなくなる社会の仕組み。しかし知恵を働かせ、バスの軽油の話のように備えをしたい。受水槽、給湯タンク、温泉タンクは満タンにして備え、停電でも使えるトイレを確保する、ポータブル発電機などの電源確保、アルコール燃料や、カセットボンベの利用など、備えられることは数多くある。

 また、安全に帰るルートの確保とご案内も大切だ。宿泊施設は停電時に機能不全にならないように常日頃から備えをし、災害発生時に冷静にお客さまの安全を確保する仕組み作りがこれからの課題になる。

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