【道標 経営のヒント 198】ビジネスホテルの心意気  コンテンツキュレーター 小倉理加


 旅のコンテンツ以外に、時計やジュエリーに関わる仕事に長く携わらせていただいているが、ここ数年、少し頑張れば買えるという価格帯の商品が売れないという声をよく聞く。具体的には、100万から200万ぐらいの価格帯だ。かえって、千万を超える高額品は安定して売れている。

 昨年ごろから、ジュエリーオークションにおいて、数億円を超える高額な落札を行う日本人コレクターが増加している現象も見逃せない。3月に香港で行われたサザビーズのオークションにおいては、日本人の個人コレクターが約15億3千万円のダイヤモンドルースを競り落とし、世界の話題をさらった。

 夢のような世界から現実の話に戻ろう。日本のホテルに時計宝飾の事情を当てはめてみると、いわばビジネスホテルが最も苦戦しているように思う。価格帯でいうと2名1室1泊1万5千円前後。漠然と感じるのではなく、根拠もある。数年前、ある40代をターゲットにした女性誌で行ったアンケート結果だ。読者の平均年収は800万円。しかし、1カ月に自由に使える金額の問いへの答えが平均8万円だった。これでは、よほどホテル好きでなければ旅先でも1万円を切ったホテルを探すことになるはずだ。

 そのためか、激戦となる1泊1万5千円前後のホテルに宿泊すると、客への配慮が考え抜かれている。女性用アメニティの充実度、飲料や新聞の無料配布、ホームエステや健康グッズの貸し出しなどが工夫され、優劣つけがたい。その中で、最近感心したのが「赤坂グランベルホテル」だ。

 仕事柄、深夜までかかることがあり、終電を逃しそうなときに都内のホテルに宿泊するのだが、たいてい当日その日の宿を探すことになる。数時間の滞在なので、当然、複数のサイトを比べて、最も得なレートを予約する。上記のホテルも、そのように予約をして2回目のことだった。慌てて予約をしたため、禁煙ルームを選んだつもりが喫煙ルームを選択していたらしい。そうすると、ホテル側から電話が入った。

 「前回は禁煙でしたが、喫煙でお間違いないでしょうか?」というのだ。そして、間違えであることを告げると、すみやかに禁煙に変更してくれた。たとえ数時間でも、喫煙の習慣がない者には残り香さえ苦痛に感じるので、とても助かった。

 どんなラグジュアリーホテルに足繁く通っても、異なるサイトから予約をすると、一見の客として扱われることが多い中、ビジネスホテルかつ、2回の利用客への配慮に驚かされた。施設はもちろん高級ホテルにはかなわないが、この電話1本のサービスに感動すら覚えたのだ。以来、赤坂の1軒は、深夜の定宿となったことは言うまでもない。

 
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