
先日、仕事で訪れた旅館のトップが1年間で11名辞めたと嘆いていた。最近も腕の立つ料理長が辞めた、信頼している設備担当者が辞めたと経営者が頭を悩ませている姿を見ている。
支配人、料理長が月に数日しか休まずに頑張っていると聞くと社員がついて来るかと心配になる。お客さまがあり、部屋が空いていても売ることができなくなることも考えられ、人手不足を見越して部屋数を減らすことを検討している旅館もある。
人手不足、人材不足の問題はどこでも抱えていて、外国人労働者の受け入れだけではとても対応できない。付加価値につながらない作業は可能な限り合理化する必要があり、浴槽の清掃や食器洗浄などが深夜に及ぶことがないようにしたい。
レジオネラ属菌対策で浴槽清掃の負担が大きくなっているが、チェックアウト後の2時間以内で浴槽清掃ができれば日帰り入浴客の受け入れも可能だ。ポンプを使って素早く湯を抜き、温泉タンクから一気に湯張りすれば可能になる。
食器洗浄はスムーズに下膳をして、夕食後の22時には終える仕組みを考えたい。客室はチェックインした後に布団敷きで部屋に入ることがないように清掃時に寝具を人数分セットすれば余分な手間がかからない。ホテルでは有料のルームサービス以外で客室に立ち入ることはない。
調理場から料理を食事処に運ぶ作業は付加価値がなく合理化したい。ホテレス2019で料理運搬を想定したITワゴンを実演したところ、日本旅館協会の生産性向上委員の方々も興味を示し、1基百万円台で今年中に製品化すると知るとすぐに導入したいという声が上がった。
館内WiFiを利用した水光熱量の見える化ではリアルタイムで使用量をグラフで表示する。例えば夜間、給湯使用量のグラフが大きく振れると食器洗浄か浴槽の清掃が原因とされ、作業の見える化につながる。
客室にあるエアコンや照明などのIoT家電は館内WiFiで集中管理が可能だ。WiFiで客室の集中管理ができれば配線の必要がなく、既存施設でも導入が現実的になる。最近はセンサーの性能が上がり、しかも安く手に入る。顔認証センサーで人数を数えればお風呂の混み具合を把握することが可能だし、AIになれば予測も立てられる。
旅館のIT化を進めようと私の会社でも建築、インテリア、機械、空調、電気、照明、ITの専門家が集まって新しい技術提案を出している。この技術を旅館側と共有し、生産性向上と付加価値の増大につなげたいと思っている。