行燈旅館には毎年お正月明けに泊まりに来てくださるイギリス、オーストラリアからの日本でのスキー目的の常連さんが何組かいる。創業当初はニセコへいらっしゃるお客さまが多かったのだが、ここ数年はかなり分散してきている中、今年もニセコ、野沢温泉のお客さまが多かった。
私はいつもの好奇心から宿泊先、街のレストランのお薦め情報などを聞き出しているうちに、今年はいっそこのまま野沢温泉に行ってこの目で確かめてきたくなった。そこで野沢温泉、地獄谷野猿公苑、知人がいる湯田中温泉の2泊3日で旅程を作った。
上野駅から1時間40分ほど新幹線に乗り飯山駅へ、駅を降りて野沢温泉行きのバスに乗り込むと数人の地元の方の他は全て外国人でバスはすぐに満席となった。毎日外国人と接しているはずなのに、このような光景を見るとなんだか興奮してきた。街は一体どうなっているのか?
飯山駅からバスで25分、温泉街は私の期待通りに歩いているのはほとんど外国人。ゆうロード(動く歩道)に乗ってゲレンデへ行って見たところ、ここも外国人だらけの様子を見てまた驚いてしまった。聞いて想像していたのと現実を見るのでは感動の度合いも違ってくる。
そして夕飯時おひとりさまの私はどこかの居酒屋でカウンターの一席くらい何とかなると高をくくっていたのだが、6時には街にある3軒の居酒屋はすでに満席。仕方なく定食屋さんに入ってみたのだがここも満席。待つこと30分、日本人となんら変わらずお蕎麦(そば)やお寿司(すし)を食べる外国人家族、どの店も英語で対応しているスタッフ、次から次へといつものようにウエイティングリストに名前を書いていく外国人観光客を見てさらに感心してしまったのである。「なんだかこれでは、東京から来た私の方が逆にお上りさん気分を味わっている」と、素直に思った。街ぐるみなのだ。
次の日は野沢温泉から朝10時近くのバスに乗り込み直行で地獄谷野猿公苑へ。平日遅い朝のバスの中は数人の乗客だったが、野猿公苑に到着すると大型バスが駐車場にたくさん並んでいて、すでに人が3人ほど並ぶとふさいでしまうほどの細い小道は、たくさんの外国人が数珠つなぎで往来していた。
雪が降る林道を歩いて30分ほどするとお目当ての温泉に入るお猿さんたちがいる温泉場がある。仲良く毛づくろいをしながら温泉に入るお猿さん家族は見ていて飽きない。しかもたくさんいる観光客は、寒くて長くは温泉の周りにいられないせいか、次から次へ交代して猿の温泉場を離れていく。
どの観光客も至近距離で交代にマナーよく写真を撮ることができる。猿たちも日常生活に慣れているせいかほとんどカメラを気にせずに、撮られ放題だ。ここでは皆、名カメラマンになれる。
最後の晩は湯田中温泉「旅館はくら」へチェックイン後、女将お薦めの「湯めぐり温泉手形」を600円で購入、「和風宿ますや」「よろづや」「清風荘」で温泉三昧。最後の湯の清風荘でリンゴ湯に初めて浸かった。何とも言えない甘いリンゴの香りでとてもぜいたくな気分を味わうことができた。
千文字ほどでは語り尽くせない雪国の魅力を再確認し、新たな魅力も再発見できた旅となった。