繁盛レストランでサービススタッフを対象に「研修成果テスト・基礎編」を実施した。対象となるのは、入社6カ月~1年のタイム社員(パート社員)3名。教育係からマンツーマンで指導を受け、なおかつ接客サポートや料理通しといった実務を習得したスタッフが独り立ち前の総仕上げとして参加する。
テストといっても、落とすための選別試験ではなく、次のステップに進むための「免許」のようなもの。接客のための基本動作や言葉遣いに問題はないか、サービスはマニュアル通りに提供されているかをベテランのサービススタッフ2名が顧客役になりロールプレイング方式で評価する。さらに、顧客の様子や状況から顧客ニーズを読み取る「推察に基づく気配り(配慮行動)」が認められれば加点される。
評価項目は74。審査員はそれぞれの項目についてA(5点)~E(1点)の5段階で細かく評価していく。
例えば、料理提供前の「アレルギー食材の確認をしたか」というチェック項目に対しては、直截(ちょくせつ)的に「食物アレルギーはありませんか」と聞くのはNG。
日本では昔から他人の身体の状況について、はっきりと聞くことは無礼とされているので、見ず知らずの他人にいきなり身体的状況について尋ねるのは不躾(ぶしつけ)な行為とみなされる。また、顧客にしても接待席やさほど親しくない同席者の前で、無遠慮に聞かれることは気分の良いものではない。
中には「アレルギー食材があることで周囲に気を使わせたくない」あるいは「食べられないものが出てきたらそのときに伝えればいい」と考えている顧客もいるだろう。
しかし、手の込んだコース料理では、見た目だけでアレルギー食材かどうかを判断するのは難しい。また料理提供後に顧客の申し出を受けて、料理を作り直してもらうのも、サービススタッフとしては気がひける。
このことからも、最初にアレルギー食材を確認しておくことは必須なのだが、ここでの評価上のポイントはその聞き方にある。相手のことをおもんばかった聞き方ができているかどうか。
A子さんは、アレルギー食材を聞く前に、一言「お体に障る食材」と添えてから、遠慮がちに「食物アレルギーなど…」と付け加えた。
「お苦手な食材やお体に障るもの、例えば、アレルギー食材などはございませんか」
接客サービスでは、モノの言い方、言葉の選び方一つで伝わり方が変わる。サービスをマニュアル通りに正しく提供するのは当たり前のこと。そのサービスを眼前の顧客のために、どれだけ丁寧にアレンジできるか。
この研修成果テストで見極めたいのは顧客をひきつける「接客センス」と、そのレベルである。