【道標 経営のヒント 164】旅館の継承 佐々山建築設計社長 佐々山茂

  • 2018年11月7日

 本業の設計監理の仕事以外に、国際観光施設協会のエコ・小セミナーの開催、観光庁・宿泊業生産性向上推進事業で各地を巡る機会が多い。

 この夏は暑すぎて出足が鈍ったのか、毎週末にやって来る台風の影響か、宿泊人員が大きく減った。その上、重油が昨年に比べ50%ほど値上がりしたこともあり、宿泊客1人当たりの水光熱費が20~30%上がっている。日本旅館協会の過去の平均が1300円なので、今年は1500~1600円になっている可能性がある。

 先週伺った旅館でも1600円を超えていた。その上、メンテナンス契約が長年見直されずに高止まりしていて、水光熱費を加えると1人当たり2千円になっていた。これは問題だと30代の跡継ぎの常務が対策を取り始めた。

 旅館の経営者は急速に若返って30代から40代が経営の中心となっている。旅館は家業で成り立つところが多く、継承問題はいつも生じる。クライアントで一番古い旅館は創業200年だが、家業だからこそ続いているのだろう。

 立地が良く、景色も良い、温泉も豊富で知名度もあるといったプラスの財産もあるが、マイナスの資産も同時に継がなくてはならない。旧耐震、アスベストなど厄介な建物もあるし、最近はHACCPの対応も迫られている。団体向けで個人客には過大な施設もある。先代、先々代が建てた建物の複雑な設備は正常に動いている時は良いが、老朽化等で問題が起きるとすぐに営業に差し支える。

 今、設計で関わる30代半ばの社長からは旅館業を系統的に教えてくれる場所はないかと相談を受けた。商品整備、販売、人事、維持管理と経営トップには幅広い知識が要求されるが、全てを網羅することは不可能に近い。

 人手不足で経験と知識の積み重ねの必要な技術職は育たず、地域の設備業者も技術が落ちていて任せられない場合が多い。空調はエアコンの性能が上がっているので極端な話、壊れたら交換でも済むが、給湯や温泉を適正に維持管理するのは意外に難しい。

 生産性向上推進活動で3人の若手経営者に自分の旅館の現状、課題、解決策を具体的な数字で示すと素早く反応し、設備には不安を感じている様子が分かる。

 私の所属する国際観光施設協会でも地域に定住して地域の旅館の面倒を見るシルバー技術者を根付かせることを提案している。われわれ技術者は新しくつくるだけでなく、維持する面でも継承する若い経営者をバックアップする体制をつくることが必要だと感じている。

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