【道標 経営のヒント 146】住宅宿泊事業法施行元年 石井敏子


 私が外国人向けに宿を経営し始めたのは1997年の7月末からだ。21年前の日本のインターネット利用者、人口普及率は約25%、2016年の総務省の統計を見てみると83.5%に増加している。今やもうほとんどの国民がインターネットを使っている時代になった。

 21年前のインターネット人口普及率の低かった時代に、積極的に外国人を受け入れている宿が少なかったこと、英語のホームページを持っている宿が少なかったことなどもあって、山谷の安宿が1泊2500円でインターネット上部屋を売り、世界中からお客さまを得るのにそう時間はかからなかった。現在たくさんの人がインターネットを使う時代になり、世間ではインバウンドの文字を見ない日はない。新規に宿を開くに当たってはインターネットなしでの集客は不可能となった。

 折しも6月15日に「民泊」を解禁する住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行された。16日の読売新聞によると都内の自治体が届け出を受理した件数はおよそ729件、私が住んでいる台東区は42件とあった。この数字を簡単に少ないとは言いきれない。

 政府は訪日外国人2020年4千万人を目標としているが、この数字に踊らされないように気を付けなければいけない。私のように21年もインバウンド事業に関わっていると、天災、為替、テロ、感染症などで集客は左右されるし、今の都内のホテル建設ラッシュ、簡易宿泊所の急激な増加なども見てもいる。

 まして自分の宿は東日本大震災で大打撃を受け、徐々に観光客が戻り、やっと2015年は良かったものの、その後の闇民泊の横行などで年々売り上げが減少している。とても楽観できる状況ではない。

 私の周りの他業種の友人などは新聞やテレビの報道でホテル業の景気の良い話ばかり見聞きしているので、私の顔を見ると「もうかっていいね」などと言ってくるが、このごろは反対意見を言うのも疲れてきたので、「まあね」くらいで流してしまっている。

 それよりもこの過当競争をどうやって乗り切るか、今でも大変な状況なのに、オリンピック以降をまたどうやってやり過ごそうかと心配、思いあぐねているというのが正直な私の現在の状況だ。

 今月初めに近所の見ず知らずの男の人が私の宿に突然やって来て「おまえの宿が満室になったら俺のアパートに客をよこせ」と、乱暴に言ってきた。話の内容から民泊経営者と推測した。気持ちは分からなくはない。しかし、「私も大変なのよ」「柳の下のどじょうは1匹」。

 皆、それぞれ切磋琢磨、創意工夫をしなければ生きていけない時代に突入した。

 
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