【道標 経営のヒント 124】温泉の職人「湯守」はクール 佐々山茂


 11月末の日曜日に「cool japan 発掘!かっこいいニッポン」を見た。テーマは温泉で湯守に焦点を当てていた。

 群馬県草津温泉の老舗旅館に温泉のお湯を管理する職人「湯守」がいる。この宿は、「源泉掛け流し」で高い温度の源泉を水で薄められないため、バルブを調整しながら流れるお湯の量を調整し温度を管理している。気温や客の人数に合わせて微調整、大小6カ所の浴槽を管理し最高のお湯を提供する湯守、クールですか? NHKもなかなか着目点がいいと思う。

 私がエコ・小活動で訪れた諏訪のある旅館では社長のお父さんである前社長が湯守をしている。それほど豊富ではない源泉で内湯と露天風呂男女4カ所を掛け流しにしている。経験と勘でバルブの調整をしていた。手をかけることで良い温泉を維持している。

 青森の旅館では39度の化石海水温泉が豊富にある。当然のように循環ろ過し、昇温していた。試しに小さい浴槽を39度の低温の掛け流しにしたら化石海水温泉の良さが際立ち、温湯にゆっくり浸かるといつまでもポカポカと温かい。

 別の旅館では熱交換器が温泉成分ですぐ詰まる。思い切ってすべて掛け流しにしたら泉質はこの上なくフレッシュになり油代、電気代も減り評判は上がった。毎日の湯替えは人手がかかり、寒冷地で冬場は露天風呂の温度維持が大変だが顧客価値は上がった。

 長野のある旅館は先代がお医者さんで湧き水と温泉を上手に使い水光熱費が驚くほど安い。温泉の上熱で水を予熱して給湯の油代を節約している。

 水道は蛇口をひねれば出るし、電気はスイッチ一つで何でもできる。しかし温泉は人の手が加えられていない自然エネルギーで思うようにならない。箱根山の噴火騒ぎで温泉が使えなくなり大騒ぎしたのはついこの間。

 料理は食材の良さを引き出して出来立てを提供するのが料理人の腕にかかっている。湯守は循環ろ過機、ボイラなどの道具を使いこなして良質でフレッシュな温泉を提供するのが役割。昔は宿の主人がその役割を担っていたが、温泉の文化が薄れ、泉質、湯量、温度そして浴槽の状況とそれぞれ違う状況で良質の温泉を提供するノウハウが失われ、せっかくの宝を無駄にしているところが多い。日本を代表する癒やしの温泉がクールといわれるように湯守をもう一度復活して顧客価値の向上に結び付けたい。

 
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